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2016/03/20  ©岐阜新聞社

育児と仕事両立、模範企業に「子育て支援エクセレント企業」認定式

 

 県は2月24日、ぎふ清流文化プラザ(岐阜市学園町)で、「平成27年度岐阜県子育て支援エクセレント企業認定式・記念講演」を行った。「県子育て支援エクセレント企業」は、仕事と子育てをはじめとした家庭との両立支援に取り組む企業の中でも、特に先進的な取り組みを行う企業を認定するもので、これまでに県内30社が選ばれていた。本年度は新たに25社が認定され、代表して足近保育園会(羽島市)とアピ(岐阜市)が取り組みを発表した。また認定式の後には記念講演が開催され、特別ゲストとして脳科学者の茂木健一郎さんが「男脳と女脳 脳科学からみた女性の活躍推進」と題して講演した。

新たに25社、認定証授与 優秀な取り組み、独自制度を実践

県の人口は、2000年の210万7700人をピークに減少傾向。合計特殊出生率も1・42人に留まっており、このまま減少が推移すると、2100年に63万人まで減少すると予測されている。昨年県が行った意識調査では、県民の7割が少子化に危機感を持っていると答えており、県内で「子どもを3人以上持ちたい」と願っている人の割合は、全国よりも10ポイント以上も高い。しかし「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「働きながら子育てできる環境がない」などの理由で、理想を実現できないのが現状だ。 仕事をしている女性の数を年齢別にみると、出産や育児期間にあたる30〜34歳の人数が、大きく下がる。その一方で、育児が落ち着いた後、就職を希望する人は県内で10万人。しかし35歳以降は、パート・アルバイトなどの非正規雇用が目立つ。特に岐阜県は、女性管理職や女性社長の割合が、全国で最も低いこともあり、県では子どもを生みやすく育てやすい環境整備、安心して働ける企業環境の支援に取り組んでいる。 その一環として、県は従業員の仕事と家庭の両立を支援する県内の企業を「子育て支援企業」として登録する制度を2007年に開始した。さらにその中から、特に優秀な取り組みや模範となる独自の取り組みを実施する企業を11年度から「子育てエクセレント企業」に認定。昨年度までの認定企業は30社に上る。本年度は新たに多数の応募の中から25社が選ばれ、県内のワークライフバランスに対する意識の高まりを感じさせた。 認定式で古田肇知事は、今回認定された25社に、美濃和紙でできた認定証を授与。「認定された55社がリーダーとなり、さらに県内の子育て環境を大きく発展させていただきたい」と感謝を述べた。また、2015年の国勢調査では、岐阜県の人口が203万人となることを紹介。これは5年前の208万人から、5万人もの減少となる。また県内各界では、どこも人手不足・担い手不足が叫ばれているとした上で、岐阜県で子どもを産み育て、活躍してもらうことで、地域を活性化していくことが、中心的課題となっているとした。 このような中、岐阜県は、全国的にも子育て分野で表彰を受ける企業が多いことを挙げ、「自社内に留まらず、地域の子育て支援にまで取り組みを広げている点が評価されており、子育て支援が岐阜県の誇るべきブランドになりつつある」と話した。

充実した子育て支援が岐阜県のブランド力に

子育て支援エクセレント企業認定式典では、県子育て支援エクセレント企業認定審査会委員長で、「内閣府少子化社会対策大綱を踏まえた結婚・子育ての推進に関する検討会」座長代理(民間シンクタンク勤務)の渥美由喜さんが認定審査会についての講評を行った。 これまで人口政策を研究する中で、人口減少の克服に成功した自治体に共通するキーワードは、郷土愛だと感じている。今、少子化対策において、全国で最も注目されているのが岐阜県といえる。理由の一つは、県民が「岐阜県は子育てにやさしい社会である」「岐阜県での子育てに満足している」と思っている割合の上昇率が、2007年から全国で最も高いこと。もう一つに、仕事と家庭の両立を目指した子育て支援が、全国随一のレベルだということが挙げられる。私は、厚生労働省が行う子育て支援功労者表彰の選考委員を8年間務めているが、受賞企業数も岐阜県がトップだ。 今回、認定された25の企業には、共通する七つのCがある。一つ目は、円滑な「コミュニケーション」。交流を通じ、社員同士がしっかりと理解し合っている。二つ目は「コラボレーション」。子育てをする人を周りが助け合い、誰が抜けてもカバーできる体制が築かれている。三つ目が「キャリアマネージメント」。社員1人1人が、ワークとライフのキャリアをどうマネージメントするか、自分で考えている。四つ目は「チャレンジ」。特に男性社員はライフに、女性はワークにと、全員がチャレンジする姿勢がある。五つ目には、「チャイルドフレンドリー」が挙げられる。自分の子どもだけでなく、同僚の子どもたちすべてを社員みんなで育てていこうという姿勢だ。六つ目の「コントリビューション」は、貢献という意味で、特に地域貢献を指す。岐阜県の企業は、単に自社に関係する子どもだけでなく、地域の子どもたちまで応援している点が、大きな特長といえる。 最後の一つは、先進企業に共通する「コモンセンス」。社員はもちろん、地域の子どもたちは企業にとって未来の消費者・労働者と捉え、大切にすることは、エクセレント企業にとっては当たり前かもしれないが、必ずしも一般企業の常識ではない。だからこそ、その取り組みを紹介することは、非常に大切。多様な職種、業種、社員規模のエクセレント企業が増えることで、他社にいい刺激を与え、子育てしやすい会社が広がっていくと期待する。 人口減少を食い止め、人を集めるためには、地域ブランドが重要となる。その点、岐阜県は子育て支援において最もブランド力がある自治体。ぜひこの認定式をきっかけに、さらに岐阜県が子育てしやすい地域を目指していくことを願う。 

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事例発表 「働く人材の確保に直結」/「地方創生にもつながる」

子育て支援エクセレント企業認定式では、足近保育園会の北川山治園長とアピの野々垣孝彦社長が事例発表を行い、育児支援や働きやすい職場環境の整備について取り組みを紹介した。 北川園長は、余裕を持った人員配置が有給休暇の取得率向上につながることを示し「育児と仕事の両立支援をしっかり行うことで、働く人材を確保できる。多くの保育士による質の高いサービスを提供すれば園児が集まり、経営も安定していくと考えている」と話した。 野々垣社長は「人口が減少する中、優秀な人材を維持し、成長を持続する企業戦略として、男女とも働きやすい職場づくりに取り組んでいる」とし、「県内の大学と連携して女性研究者の研究環境整備に取り組むことで、優秀な人材が地域に定着し、『地方創生』にもつなげたい」と語った。

 

2016年3月20日 岐阜新聞朝刊掲載

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