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2015/10/18  ©岐阜新聞社

病児保育で働く親の不安解消

 

 育児と仕事を両立する母親にとって、最も頭を悩ませるのは、子どもが病気になった時ではないだろうか。看病をしてやりたいが、仕事は休めない。急なことで、預かり手が見つからない。引っ越したばかりで、身近に知り合いがいない。そんな葛藤を救う受け皿が、病児保育サービスだ。社会における女性の活躍が望まれる中、行政や地域による子育て支援にニーズが高まっている。

病児保育サービスとは?

病気の子どもを一時的に預かり
 病児保育とは、仕事や冠婚葬祭などの用事で保護者が家庭で面倒をみることができない場合、一時的に病気を患った子どもを預かる支援サービス。病院や病児保育室といった看護師などの専門スタッフが常駐する施設で、子どもが安心して静養できるよう心身をケアするため、保護者は安心して子どもを預けられる。岐阜県は、病児保育サービスの普及を通じ、子育てと就労の両立を支援してきた。

看護師らが常駐 県内には30カ所
 病児保育の内容は、病状が出ている児童を対象とした「病児対応(病後児預かりも可)」、病状は治まっても完治していない児童を対象とした「病後児対応」、保育中に微熱などの体調不良になった場合に、引き続きその保育所で対応する「体調不良児対応」の3つに分かれ、各施設で対応可能なサービスは異なる。早い所では、平成8年から事業をスタートし、核家族化や女性の社会進出が進むにつれて施設は増加。現在は県内21市町村に30カ所ある。居住の市町村に施設がなくても、協定を結んでいる近隣の市町村の施設を利用できる場合もある。県は、今後も病児保育施設を増加させる方針だ。

市町村や施設に事前登録が必要
 サービスを利用するには、まず事前に居住市町村または各施設にて登録が必要。利用時には登録施設に連絡すれば、医師の診察後、症状や定員に応じて受け入れてくれる。乳幼児から小学校低学年程度の子どもを預かり、利用料は1人1日2000円程度。登録場所や利用方法、料金等は施設ごとに異なるため、まずは市町村に問い合わせを。

未実施エリア解消へ保育士を養成 県、利用環境の整備推進
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 県子育て支援課によると、現在県内の6市町村では病児保育が利用できない。国の補助金を利用する場合、施設内には看護師など専門家の配置が必須だが、利用が見込めない地域では人件費など採算面での課題もあり、実施に至らないのが現状だ。未実施のエリアは中山間地域が多く、近隣の市町村も遠方で広域利用も困難。支援を求める声に対応できる環境整備が求められていた。

 そこで県は、一昨年前から病児保育ができる保育士の養成に乗り出した。保育所に勤務する保育士を対象に、病児保育に必要な技術や知識を習得できる専門研修を実施。既存の保育所内の空きスペースを利用し、研修を受けた専門の保育士が一時的に病児を預かる、独自のシステムを構築した。研修では、医師や看護師らが講師となり、医学的な知識や緊急時の対応を講義。実際にサービスを行っている施設での現地実習もあり、座学と体験の両面からケアの仕方を学ぶ。中には、感染症の予防法や便・嘔吐(おうと)物の処理法など、日頃の保育に役立つものもあり、未実施地域はもちろん、すでに実施している地域の保育士も参加し、保育内容の質向上へとつなげている。その結果、2年間で31人の保育士が受講。県はこの取り組みを通じて、県内全域で病児保育サービスが受けられる環境を早期に整備したいとしている。

「ファミサポ」事業広がる 利用者と援助者を橋渡し

 病児保育施設を利用できても、平日の利用時間は午前8時〜午後6時のところが多い。保護者の中には、利用時間内に子どもを送迎するのが難しいという声もある。
 そうした支援の隙間を埋めるため、市町村が運営するファミリー・サポート・センター事業(ファミサポ)を活用することができる。
 ファミサポは、地域で子育て支援を受けたい人と、援助ができる人が会員として登録。市町村の専門職員や委託を受けたNPO団体などがアドバイザーとして仲介し、支援内容に応じて支援を提供できる会員を紹介する。
 事前の登録が必要だが、登録料・会費は不要。依頼会員は利用時に所定の料金を提供会員へ支払う仕組みだ。現在、県内では32市町が事業を展開し、登録者数も年々増加傾向にある。

羽島市の子どもサポートセンター・かみなりくん
利用者もサポート側も心身充実

 羽島市正木町の子どもサポートセンターかみなりくんでは、「病児保育室かみなりくん」と「はしま広域ファミリー・サポート・センター」の両事業を一体的に行っている。この日、兄妹を連れて訪れた上野ひとみさん(32)は、平日週5日パートで勤務し、2年前からこの病児保育室を利用。さらにファミサポにも登録し、仕事中に子どもが発熱した時には、提供会員に送迎や病院の受診を依頼し、病児保育室へ連れて行ってもらうという。「保育園で体調を崩したと呼び出されても、なかなか仕事は抜けられない。ファミサポに連絡すれば安心して預けられるので、仕事にも集中できる」と支援を有効活用している。
 現在同ファミサポには、416人の依頼会員と313人の提供会員が登録。上野みどりさん(60)は、子どもの独立後、提供会員に登録し、10年以上携わってきた。「初めて預けるママは不安だと思うが、子どもはすぐ懐いてくれる。どの子も孫のように可愛くて、楽しく活動している」と笑顔を見せる。学校や塾への送迎や託児、産じゅく期の母親支援などの他、急に体調不良を訴えた子どもを保育所へ迎えに行き、保護者が予約した医療機関の受診後、病児保育室に送ったり自宅で面倒を見るなど、緊急時の対応も行っている。
 こうした切れ目のない支援により、「病児保育室かみなりくん」の年間利用数は約400件を超える。所長の杉原真奈美さん(54)は「母親が就職面接の際に『子どもが病気になった時に預ける所はあるのか』と尋ねられ、当施設のことを話したら安心されたという声も聞く。登録は無料なので、ぜひ多くの方に活用してもらいたい」と利用を呼び掛けている。

イクメンパパ、安心

 羽島市在住の林享さん(41)は、1年前から「病児保育室かみなりくん」を利用。2歳の息子の祐希君を送迎するイクメンパパだ。
 「共働きのため、保育園に入る際に起こり得ることを夫婦で想定して、病児保育室を探した。始めは子どもが不安がるのではと心配だったが、職員の方がほぼマンツーマンでみてくれて、笑顔で帰ってきたので安心した」と林さん。毎回帰宅時には、一日の様子や食事内容、便の回数など、きめ細かく報告してもらえるため、夕方医者を受診する際にも的確に病状を伝えられる。
 「この1年で10回ほどお世話になり、今では熱が出ると子どもも行くのを楽しみにしてくれる。近隣にこうした施設があって助かった」と話す。

 

2015年10月18日 岐阜新聞朝刊掲載

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