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2015/12/20  ©岐阜新聞社

ひとり親家庭を手厚く支援

 

 近年、ひとり親家庭は増加の一途にある。ひとり親は家計を支えながら、「家事」や「子育て」といった役割をひとりで担っており、子育ての時間などを十分に確保できない。その結果、子どもの教育に対する不安を抱えながらも、誰にも相談できず孤立しているケースも多い。それを受けて県では、ひとり親家庭の抱える多くの困難を解決するため、ひとり親家庭に対する総合的な支援施策の拡充が展開されている。

ひとり親家庭の数、県内で2万世帯超 資格取得時の負担軽減、公営住宅の優先入居… 県が多角的にサポート

 2013(平成25)年に実施した「岐阜県ひとり親家庭実態調査」によると、母子世帯数1万8996世帯、父子世帯1548世帯と、ひとり親家庭数は10年前に比べ約4千世帯増加。母子・父子共に「生活費」に悩む人が最も多く、母子家庭では次いで「仕事」や「子育て」、父子家庭は「借金・ローン返済」「子育て」が続く。特に母子家庭の約半数は、平均年間収入200万円未満の低収入階層に集中。多くが派遣社員やパートなどの非正規雇用にしか就けず、不安定な生活を余儀なくされている。父子家庭は約6割が正社員・正職員ではあるが、5年前に比べて平均年間収入は50万円減少。母子家庭に比べ、家事など生活面でも多くの困難を抱え、厳しい状況に置かれている。
 

 

 こうした結果を受け、県ではまず安定収入から経済的自立を促すため、就業支援に取り組んできた。看護師や保育士などの資格取得を目的として2年以上修業する場合には、一定期間高等職業訓練促進給付金を支給して、生活負担を軽減。また最終学歴が中学卒のひとり親が、高等学校卒業程度認定試験合格のために講座を受講した場合などにも受講費用の一部を支給することで、“学び直し”を支援し、より良い条件での就職や転職を目指す。

 公営住宅の優先入居により生活を支援し、また同時に市町村と連携した保育サービスの充実など、子育てと就業の両立を支援。児童扶養手当のほか、進学等でまとまった費用が必要な場合は、低利または無利子での貸付金も利用できる。
 多角的な支援が準備される中、県や市の福祉事務所などに、ひとり親自立支援員を配置。相談機能の強化によって、個々の課題を把握した上で、きめ細やかな支援につなげている。

 ※各グラフは「岐阜県ひとり親家庭実態調査」のデータより

就業や養育費相談、心と暮らしをケア 県ひとり親家庭等就業・自立支援センター

 「岐阜県ひとり親家庭等就業・自立支援センター」は、一般財団法人岐阜県母子寡婦福祉連合会(渡邊ヨシ子会長)が県と岐阜市から委託を受けて運営。「子育て中で労働時間に制約があり、仕事に就けない」「就職経験がなく、適した仕事が分からない」など、昨年度寄せられた相談は359件に上る。就職希望者には「ひとり親家庭等就業支援バンクカード」に登録後、ハローワークなどが提供する求人情報を年間約1500件紹介。昨年は常勤26人、パート勤務28人の就職に至った。
 また、就業に必要な知識や技能習得に向けた講習会を無料で実施。介護職員初任者や医療事務、パソコンなど資格取得のほか、インターネットを介して在宅で仕事ができるクラウドソーシングを学ぶ場もあり、働きながらより条件の良い職への道を広げられる。介護職員初任者研修の受講者は「経験がなく不安だったが、受講を通して仕事への意欲が湧いた。センターの支援で介護関係へ就職でき、充実した日々を過ごしている」と語る。昨年度は受講者のうち9人が、新たな職場へとステップアップしている。
 さらに、離婚に伴う養育費や債務、財産分与など、自分では解決できない困り事についても、問題解決をサポート。養育費相談員による相談に加え、養育費講習会を定期的に行い、法的な問題には初回のみ1時間無料で弁護士の法律相談を実施。県下5人の弁護士を紹介することも可能だ。
 同センターでは、相談員自らが年2回広報誌を発行。大屋直子センター長(66)は「相談する人が周りにおらず、話を聞いてもらえただけで救われたという人も少なくない。まずは少しでも多くの人にセンターの存在を知ってもらいたい」と話す。

元教員らが無料で学習指導 ひとり親家庭学習支援ボランティア 羽島市で県委託事業スタート

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 ひとり親家庭では、仕事で親の帰りが遅く、勉強を見る時間がなかったり、学習塾へ通わせる経済的余裕がないなどの理由から、勉強が遅れがちになる子どももいる。そんな悩みを解消するため、今年5月、県下初のひとり親家庭学習支援ボランティア事業が羽島市でスタートした。
 県から委託を受けた一般財団法人岐阜県母子寡婦福祉連合会が主動で行う「ケンパ・ドリーム・スクール」は、毎週土曜日の午後2時から同4時までの間、小1から中3までの児童を対象に、無料で学習相談や学習指導を行っている。公共施設を利用した塾形式のほか、児童などの自宅へ派遣する家庭派遣形式にも対応し、現在登録数は43人を数える。教えるのは、教員OBや大学生を中心としたボランティア。参加する名古屋学芸大学3年の箕浦えみなさんは「子どもたちに『分かった』と言ってもらえると、やってよかったと思う」と、やりがいを語った。
 学習支援コーディネーターを務める宗石惠好さんも元教師。その経験を生かし、それぞれのやる気を引き出す授業を大切にするほか、時には厳しく注意をする姿も。「始めは長時間座ることができない子も次第に集中できるようになり、継続の大切さを感じている。今後は各年齢やレベルに応じた学習支援を行っていきたい」と、さらなる意欲を見せる。
 またこの事業を通して、親の中にも変化が生まれている。中には「始めは送り迎えをするだけだったが、待っているだけではもったいないと思い、一緒に勉強するようになった」と、子どもと並んで学ぶ親の姿も。ひとり親の学び直しのきっかけにもなっているようだ。

 

2015年12月20日 岐阜新聞朝刊掲載

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