コロナ禍による影響に加え、最近の物価高騰もあり、経済状況が悪化している世帯は少なくないのが現状だ。日本の未来を担う子どもを育てている世帯への打撃は深刻であることは言うまでもなく、子どもたちの笑顔を守ろうと、県内ではさまざまな支援が行われている。
その一つが、無料や低額で利用できる子ども食堂や学習支援などの「子どもの居場所」。県内には今年10月末現在で156カ所あり、4年前と比べると2.5倍ほど増えた。ただ、周りのサポートを得られずに運営に課題を抱えているケースも多いことから、県では本年度、子どもの居場所を総合的にサポートする「県子どもの居場所応援センター」を県社会福祉協議会内に立ち上げた。今回のはぐくみのわでは、センターの取り組みを紹介する。
◇子どもの居場所応援センターが発足
◆県社協にパントリー開設 企業→パントリー→居場所→子どもの元に
子どもの居場所づくりに取り組む団体等はこれまで、個々で企業や農家などから支援を取り付けていたため、団体によって受けられる支援のばらつきがあった。団体の中心メンバーが自分たちのお金を出し合って食事等を振る舞うケースも珍しくなく、長く続けていく上で大きな負担になっていた。比較的支援を集めることができている団体であっても、同じ種類のお菓子がさばききれないほど寄せられることもあり、配布や保管をする上で、運営団体側に大きな負担となっていた。支援を考えている企業側にとっても、自ら運営団体を探して連絡しなければならなかった。
県では、居場所づくりの運営団体と物資を寄付する企業等の間に入ってマッチングすることで、両者にとってより負担のない形で活動できる体制を整えようと「県子どもの居場所応援センター」を設立。8月からは、運営団体は必要としている食料品(米、飲料、菓子)を、企業側は提供可能な品を事前に登録する「応援サポーター」制度を始めた。10月末現在の応援サポーターの登録数は企業18、運営団体57の計75件。企業は、スーパーやドラッグストア、食品関係だけでなく、部品メーカーなどの食品とは無縁なところなどさまざま。賞味期限が迫っていて一般販売がしづらくなったものや災害用に備蓄していたものの更新の時期になったものの寄付、「子どもたちが喜ぶものを購入してください」と現金の申し出もある。
企業から提供を受けた食料品等は、岐阜市下奈良の県福祉会館内に設けたパントリーで一時的に保管。運営団体に必要な個数等をセンター側が聞き取り、調整した日時に運営団体が原則取りに行くという形で配布している。パントリーには冷蔵設備がないため、冷蔵品や冷凍品、生鮮食品を扱うことはできない。野菜等の寄付の申し出があった場合はセンター側で調整し、申し出者の近くの団体などにつないでいる。
岐阜市の円徳寺で「てらこや無償塾」や子ども食堂、困窮世帯への食事の支援を行っている市民団体「岐阜キッズな(絆)支援室」は早速8月にサポーター登録した。若岡ます美代表は「コロナ禍に加えて昨今の物価高騰で支援を必要としている世帯は増える一方。特にシングルマザーの困窮は著しく、『お米がない』『満足に食べられていない』という話は日常的に聞く」とする。同団体は10年前に発足し、現在は50世帯150人ほどとコンタクトを取っている。独自のルートを開拓してさまざまな団体や個人から米や食料等の寄付を受けてはいるものの、支援先は増える一方で、独自の調達では限界があるのは事実。若岡代表は「センターからは毎月確実にいただけるため見通しが立てやすくなって大変ありがたい。安心感も大きい。いただいた食料はてらこや無償塾に来る子に持たせたり、家庭訪問をして渡したりしている。皆さん大変喜んでくださっている」と話している。
ただ、センターは無事に動き出したものの課題も多い。現状では、運営団体がサポーター登録をした際、初回は同協議会の職員が、視察とヒアリングを兼ねて物資を届けているが、それ以降は県福祉会館での受け渡しとなる。そのため、岐阜市から距離のある運営団体は「取りに行けないから」とサポーター登録を見合わせているケースも少なくない。
そのためセンターでは9月から出張型のパントリーを開始。現在は可児市、多治見市、恵那市の各社会福祉協議会の協力をえており、該当する市の運営団体は、各市の社会福祉協議会に取りに行くこともできる。受け渡し時に他の団体の代表者に会うこともあり、団体同士の横のつながりが生まれるきっかけにもなっているという。
他にも、運搬や仕分け、保管、分配の担い手不足などについても、試行錯誤を続けているところ。県社会福祉協議会生活支援部の渡辺顕直部長は「子どもの貧困について少しでも多くの方に知っていただき、いろいろな形で支援していただければ」と話している。サポーター登録などについての問い合わせは県子どもの居場所応援センター、電話058(278)7050。
◆子どもの居場所づくり 県が開設・運営サポート 人材育成研修がスタート 本年度から
10月末現在で県内に156カ所ある子ども食堂や無償塾などの子どもの居場所。それぞれの居場所では、子ども一人一人に寄り添いながら「交流」「見守り」「支援」が行われているほか、最近では子どもから受けた悩み相談を行政等相談窓口につなごうとする動きも増えている。今はまだ一歩踏み出していなくても、子どもたちのために「何かの形で役に立ちたい」と思っている個人や企業・団体も多い。県では、子どもの居場所づくりの輪の広がりや専門性のある支援の必要性が増してきたことを受け、本年度から「子どもの居場所を支える人材育成研修」を開始した。
研修は6月からすでに始まっており、3月末までの月1回、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」によるオンライン形式で開催している。毎回異なるテーマに沿って有識者が講義をした後、県内の先進事例の発表、参加者同士の交流という流れで進む。次回(第6回目)は11月24日で、県内の弁護士が「子どもの非行を取り巻く環境と支援」と題して話す。第7回は12月22日で、生活困窮を抱える世帯の子どもたちを中心に、親子の生活支援を行う大阪市のNPO団体の代表者が「親(家庭)との連携・かかわり」をテーマに行う。時間はいずれも午後1時30分から同3時まで。
参加無料。対象は、子どもの居場所支援にすでに取り組んでいる運営団体のスタッフや、運営に携わる市町村社会福祉協議会担当者、社会福祉法人担当者らだが、一般の参加も可能。問い合わせ、申し込みは事業の委託を受けたぎふ学習支援ネットワーク、メールアドレスgifu.gakushusien@gmail.com
◆スタッフや拠点の確保、補助金… アドバイザーがお答え
県では、子どもの居場所を新たに開設しようとする団体や、実施中の団体に対して助言を行う「子どもの居場所づくりアドバイザー」の派遣を行っている。
支援内容は、スタッフや活動拠点の確保、子どもとの接し方、各種補助金等の活用方法などについて、県の委嘱を受けたアドバイザーが親身になって答えるというもの。場合によっては県や市町村の職員や社会福祉協議会職員が同席することもある。
講師料・講師の交通費は無料。問い合わせは県子ども家庭課、電話058(272)1111(内線2689)。
◆配偶者暴力相談支援センター リーフレット、性別問わない表紙に
ドメスティック・バイオレンス(DV)と聞くと、夫から妻への殴る、蹴るなどの暴力行為がイメージされがちだが、妻から夫、同性パートナー間で振るわれる暴力もDVに数えられる。身体的暴力以外にも、大声でののしる、無視をするなどの精神的暴力、セックスを強要するなどの性的暴力、生活費を渡さない、支出を細かくチェックするなどの経済的暴力、実家や友人との付き合いを制限する、携帯電話をチェックするなどの社会的暴力もDVに数えられる。子どもには直接の危害を与えていなくても、目の前でDVを繰り広げることは虐待の一種で、成長・発達に大きな影響を与えてしまうため絶対に避けなければならない。
県の配偶者暴力相談支援センターでは、DV被害に悩む方の気持ちを受け止め、問題解決につなげるため広く相談を受け付けている。DVは夫から妻への暴力だけではないことを広く知ってもらおうと本年度、センターについてかかれたリーフレットやカードを刷新。虹のようなカラフルな線が書かれた背景の真ん中に「ひとりで悩まないで」と書き、男性やLGBTQの方でも手に取りやすくした。これまでは花が書かれたデザインに「女性相談のしおり」と大きく書かれたものだった。同センターの担当者は「『これくらいは我慢するもの』『外に知られたら家の恥』と思って相談しない方もいるけれど、一人で悩まず、まずは声に出してほしい」と呼び掛けている。
◆チェックリストで相手との関係確認
DV被害に遭っていても、それを愛情表現だと感じ、被害を受けていることに気付けないケースは珍しくない。逆に、無意識にDVの加害者となっていることもある。
DV被害女性の支援を行う民間団体「あゆみだした女性と子どもの会」が作成したチェックリストを通し、パートナーとの関係が健全かどうかをいま一度考えてみてください。
◇パートナーとの関係は健全ですか?
次の項目であなたが経験した事のある項目にチェックを入れてください。
あなたのパートナーは・・・
□あなたのことを「お前はバカだ」「ダメなやつだ」など嫌なことを言ったりする。
□人前であなたのことをバカにしたり恥をかかせたりする。
□携帯電話に何度も電話やメールをしてきて、あなたの行動をチェックする。
□あなたが親族や友人と付き合うことを嫌がったり、悪口を言ったりする。
□携帯電話を勝手にチェックして、メールやアドレスを勝手に消去する、消すことを強要する。
□喧嘩やトラブルの原因を「お前が悪いからだ」などと言ってあなたを責め立てる。
□怒って物にあたったり大声を出したりして、あなたが恐怖を感じるような行動や態度をとる。
□叩かれる、突き倒される、髪を引っ張るなどの暴力を受けたことがある。
□セックスを断ると機嫌が悪くなったり、怒ったりする。
□常に自分の都合や考えを優先し、それに従うようにあなたに言う。
□自分の意見を言いたくても、相手にしてくれない。
□自由に外出させてくれない。
そしてあなたは・・・・
□パートナーの言動(不機嫌・暴言・暴力)を恐れている。
□いつもパートナーの機嫌を気にして、怒らせないように気を配っている。
□パートナーと一緒にいないときは、なんだかホッとする。
□パートナーを優先して、自分のやりたいことをあきらめたことがある。
□パートナーを怒らせないために、自分の意見は言わないようにしている。
□いつもパートナーの言うとおりに行動している。
□必要な物、自分が欲しいものがあってもパートナーの許可がいる。
□パートナーのセックスは断れない。
DV・デートDVは配偶者・恋人などの個人的で親密な関係に起きる暴力のことを言います。その暴力は殴る蹴ると言った身体的なものだけではありません。心理的(言葉)、性的、経済的な暴力も含まれます。相手を自分の思い通りにするために、暴力と言う手段を使って支配するのがDVです。「頬を叩かれただけ」「私が悪いからしょうがない」「口うるさいだけ」などと思わないでください。
ひとつでも該当する項目があったらDV・デートDVではないか考えてみましょう。
あなたは自分らしく幸せに生きる権利を持っています。けして一人で悩まないで下さい。
ⒸNPO法人あゆみだした女性と子どもの会(無断転用やコピーをしないでください)
◆配偶者暴力相談支援センター
・女性相談センター 電話058-213-2131
・岐阜地域福祉事務所 電話058-272-1929
・西濃県事務所福祉課 電話0584-73-1111
・揖斐県事務所福祉課 電話0585-23-1111
・中濃県事務所福祉課 電話0575-33-4011
・可茂県事務所福祉課 電話0574-25-3111
・東濃県事務所福祉課 電話0572-23-1111
・恵那県事務所福祉課 電話0573-26-1111
・飛騨県事務所福祉課 電話0577-36-2531
電話・面接相談時間 平日午前9時~午後5時(年末年始を除く)
◆県女性相談センター 女性の悩みに寄り添う
県女性相談センターでは、女性からの相談全般を受け付けている。人間関係に関する相談が多いが、配偶者や同居する家族からの暴力などの悩みが寄せられることも珍しくない。必要に応じて他機関につないだり、保護が必要と認められる場合は一時保護を行うなど、新たな一歩を踏み出すための支援も行っている。
同センターでは、昨年度3379件(対前年度比25・8%減)の相談を受け付けた。全体の相談件数は減ったものの、このうちDV被害相談は1302件で、前年度の1260件よりも増加。相談件数の推移について同センターは「昨年度から、夜間と土日祝日の相談をDVに関することのみに限定したのが要因の一つ。限定したことで、被害が深刻な方につながりやすくなったという手応えはある」と話す。
また、全体の相談件数の減少については、県男女共同参画・女性の活躍推進課が昨年、女性のつながりサポート支援事業を始めたり、岐阜市もあんしんつながりステーションを開設したりと女性の悩みに寄り添う体制が充実したことも挙げる。センターは「女性向けの支援が増えたから分散化されたのでは。困っているのであれば、つながりやすいところで構わないので、ためらわずに電話をしてほしい」と呼び掛けている。
◆県女性相談センター
電話058-213-2131
相談時間 午前9時~深夜0時(午後6時以降、土日祝日はDVに関する相談のみ)
面接相談 平日の午前9時~午後5時(年末年始を除く)※予約制
◆性暴力被害者支援センター LINEで相談可能
性別や年齢を問わず、性暴力被害者の相談に24時間体制で対応している「ぎふ性暴力被害者支援センター」。産婦人科医療や警察などにもすぐにつなげられる体制を整え、ワンストップで総合的な支援を提供する拠点となっている。
昨年7月、電話やメール、対面での相談に加え、コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」での相談を開始した。昨年度、トータルで1122件の相談があったうち、ラインは127件。そのうち15歳以下からは全71件中61件がラインでの相談で、若年層にとって相談しやすいツールであることが明らかになった。
ライン登録の際、センター側に知らされる内容は、ライン上の登録名とアイコン画像のみで、匿名で相談することもできる。専用の相談システムを用いているため、相談内容が外部にもれることもない。
ラインの二次元コードをはじめ、センターの連絡先等は、幅広い世代への啓発を推進するために県内のコンビニエンスストアのトイレにステッカーを貼って周知。個室トイレ内に貼ることで、周りの目を気にすることなくゆっくり見たりスマートフォンで写真を撮ったりすることもできる。今年6月には県内の中学校と高校で、センターや性暴力について書かれたリーフレットを配布。「大切なあなた かけがえのないあなたに伝えたいこと」と表面に書かれており、一人で悩まず、まずは相談することの大切さを呼び掛ける内容となっている。
◆支援員・棚橋さんに伺いました
ぎふ性暴力被害者支援センターの支援員棚橋佳代子さんに、ラインでの相談状況や相談を考えている方に向けたメッセージを伺った。
◇ ◆
-ラインでの相談を始めて1年以上が経ちました。
ラインを導入する前は「性被害をラインで相談する方はどのくらいいるのだろう」という半信半疑の気持ちもありましたが、多くの方が登録してくださっている状況となり、始めて良かったと思っています。取っ掛かりとしてラインが使いやすいのであればぜひ使ってください。
ラインでは、相談内容を文字にすることで、相談者が自分の気持ちを整理できるよいところもあります。
一方、電話ですと、声のトーンから情報を得ることができます。話を進めていく中で、ラインから電話や対面などに移るケースもありますし、その逆もあります。ラインでも電話でもどちらでも構いませんので、相談したいタイミングに応じて使いやすいものを選んでいただければと思います。
-ライン登録を考えている方に対しては。
今すぐに相談したいということでなくても、友だち登録をしておけば、何かあったときに相談しやすいでしょうから、まずは登録をお願いします。相談の際は短文でも長文でも構いません。思いを率直に送っていただければと思います。
性暴力の被害者全般に言えることですが「親に知られたくない」「警察には行きたくない」とご自身で抱え込んでしまっている方が多いです。年齢の高い方は、過去の被害を話される方もいます。「こんなこと」と思わずにまずはお話いただければと思います。
◆ぎふ性暴力被害者支援センター
#8891(全国共通短縮番号)
電話058-215-8349
※24時間対応
※第2、第4木曜日は男性相談員も対応可能