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2024/08/09  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 時代のニーズ捉え、誰もが働きやすく 県WLB推進エクセレント企業

 

◆昨年度は16社を認定 ダイバーシティやSDGs推進等に取り組む
 県では2011年度から、仕事と家庭の両立支援や魅力的な職場環境づくりなどに取り組む企業の中で、特に優良な取り組みや他社の模範となる独自の取り組みを行う企業を「県ワーク・ライフ・バランス(WLB)推進エクセレント企業」とし、昨年度までに181社が認定を受けている。取り組み内容はさまざまで、子育て支援やメンタルケア、リモートワークの制度化、情報通信技術(ICT)の活用、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向けた地域を巻き込んだ活動、外国籍の人や障がい者に対してのフォローの充実化など、ニューノーマル時代を生き抜く上でヒントとなる事例も数多い。
 昨年度は、メーカーや医療・福祉関係など16社を新たに認定。一般的に働き方改革を実現させづらいとされている農業分野からも初めて認定された。
 認定企業の取り組みとしては、男性が育児休業を取りやすい雰囲気づくりに力を入れたり、性的少数者(LGBT)が同性婚をする場合、異性同士の結婚と同等の扱いにしたり、障がい者雇用を進める中で、従業員が率先して職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修を受けて共に働きやすい職場づくりを進めたり、スマートフォンを活用したりと、時代を捉えた好事例が相次いだ。
 2月には岐阜市宇佐の県図書館で認定式が開かれ、古田肇知事は「エクセレント企業の取り組みは全国的に見てもレベルが高く、業種の裾野も広がっている。コロナは不幸なことではあるが、これを機にWLBを推進するという方向に進んでいるのも特長。認定を受けた企業は、県のロールモデルとしてさらなる取り組みを進めてほしい」とあいさつ。企業の代表者に認定証を手渡した。
 講評では、ダイバーシティコンサルタントで認定審査会の渥美由喜委員長が、「岐阜県の制度は、審査委員が企業に出向いて課題を伺い、クリアしたら認定するという全国唯一の育成型。最初に目立つ企業が受賞したらレベルが落ちていくケースが一般的だが、岐阜では年々レベルが上がり、発展を続けている」と全体を評価。本年度の認定を受けたうち企業の具体的な取り組みを挙げ、「認定を受けた企業は『社員・顧客・経営の三方よし』のうち、顧客の範疇を超え、地域住民にまで裾野を広げ地域の活性化につなげている。地方の温かいストーリーが支持される時代。中小企業ならではの地域密着の視点を生かし、さらに他社の取り組みも参考にして業界の中でもリーディングカンパニーとなってほしい」とエールを送った。

 

 

◆県WLB推進エクセレント企業
申請、補助金等の問い合わせ
県男女共同参画・女性の活躍推進課
電話058-272-8237
メールc11234@pref.gifu.lg.jp

 

◆2021年度の認定企業 五十音順
製造 エイワ(不破郡垂井町)
金融・保険 SMBC日興証券岐阜支店(岐阜市)
農業 大雅(山県市)
福祉 如水会(揖斐郡大野町)
情報通信 テクノア(岐阜市)
情報通信 電算システム(岐阜市)
製造 長井紙工(関市)
製造 日本トムソン岐阜製作所(美濃市)
製造 日本キャンパック岐阜工場(岐阜市)
福祉 花園福祉会(土岐市)
製造 早川工業(関市)
福祉 ひがし福祉会(中津川市)
卸売・小売 ファミリー(可児市)
福祉 北晨(大垣市)
製造 ミツトヨ中津川工場(中津川市)
卸売・小売 ヨシケイ岐阜(関市)

 

◆本年度の認定申請受付中
 県では、本年度の県WLB推進エクセレント企業の認定申請を、7月8日まで受け付けている。
 申請には、県内に本社または事業所があり、随時受け付け中の「県WLB推進企業」に登録していること、1人あたりの月平均所定外労働時間が45時間未満、セクハラ・パワハラ・マタハラに対する防止措置を講じているなどの必要項目を満たしていることが必要。その上で、職場環境、育児・介護支援、女性の活躍推進の取り組み状況のほか、オリジナルの取り組みも加えて評価される。申請後は専門家らによる訪問調査があり、審査会で認定の可否を決める。

 

◆認定目指す企業へ県が補助金を交付 最大20万円
 県WLB推進エクセレント企業認定に向け取り組む企業に対しては、県が補助金を交付している。
 対象は、県WLB推進企業の登録を受けており、なおかつエクセレント企業の認定に向けた計画を策定している企業。次世代育成支援対策推進法に規定する一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていることも必要。
 補助金の対象となる事業は、WLBに関連する各種研修会や在宅勤務の実施に向けたコンサルティングやシステム導入の費用などで、補助対象経費の2分の1以内の交付を受けることができる(千円未満切り捨て、上限20万円)。
 本年度分の募集期限は12月23日。予算には上限があり、なくなり次第終了。

 

◇2021年度認定企業の中から 8社の取り組み紹介

 

◆エイワ 垂井町・アルミ加工 コミュニケーションの円滑化に注力
 エイワでは、社員同士のコミュニケーションの促進のため、さまざまな取り組みを行っている。社内サークルへの活動費補助(1サークルに付き月1万円)もその一つ。現在5人が参加する英会話サークルでは、活動費を講師への謝金に使い、週に一度オンラインで英会話を学ぶ。園芸サークルに参加する管理営業チームの女性社員は「部署が違う同僚とも共通の趣味について話せて楽しい」と充実した表情を見せる。同僚へ感謝の気持ちを書く「ありがとうカード」は、専用のポストに投函すると給与明細と一緒に本人に直接届く仕組みとしている。
 社員とその家族も大切にする社風であり、自宅の新築や社員の子どもの入学などに合わせて祝い金を支給している。

 

 また、2018年から積極的に採用している技能実習生や外国人労働者に向けては、毎週月曜の定時後に日本語勉強会を実施。講師を佐藤全良社長自ら務めることで、生活や仕事の悩みを聞く機会にもつながっている。
 現場の社員が主体的に職場環境を変えていくための取り組みとして、働くうえで気になる問題を指摘すると100円、改善案を提示して実行すると500円を支給。道具の定位置を決めて印をつけるなどの提案が月に15~20件ほどあり、ほぼすべて改善に至っている。
 さらに、下請け中心の会社経営を脱却するため独自の製品開発に取り組むプロジェクトを20年に立ち上げた。社内から募集したアイデアをもとに開発を進め、商品化を目指すことで、技術向上やモチベーションアップにつながっている。

 

◆大雅 山県市・農業 女性の活躍で農業の未来を開拓
 イチゴの栽培指導や観光農園、有機肥料の製造を手掛ける大雅。これまで男性社員がほとんどだった同社は、2014年に安田奈津樹さんが入社したことを機に、女性が活躍できる会社づくりを進めてきた。意欲の高かった安田さんを見込んでイチゴ観光農園のリーダーに抜てきし、新商品の開発や顧客対応などを一任。すると売上は伸び、会社を支える事業に成長した。これらが評価され、17年には「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選(WAP100)」に選ばれた。
 また、安田さんの妊娠をきっかけに、育児や介護に関する休業制度を整備。休職前後には要望に応じて勤務時間を調整するなど、柔軟に対応している。20年に育児休業を取得した小寺千尋さんは「前例があったのでスムーズに対応してもらえた。復帰後も子育てをしながら無理なく働けている」と語る。


 18年には女性社員たちの提案により、農業の生産工程を評価する制度「グローバルGAP」を県内のイチゴ生産者で初めて取得した。取得後も労働環境について定期的に話し合う場を設るなど日々改善に取り組み、さらに働きやすい職場となるよう努力を続けている。
 社員の家族にも会社のことを知ってもらおうと、新しく入った社員とその家族を対象に、江崎雅教代表取締役との食事会を入社3カ月以内に実施しており、製造部の杉原徹さんは「会社の方針などを代表取締役から直接聞けたことで、家族も私も安心できた」と話す。家族の誕生日やクリスマスにはケーキをプレゼントするなど、社員の家族も会社の一員として大切にする社風が根付いている。

 

2021年度認定企業の中から 8社の取り組み紹介

 

◆テクノア 岐阜市 ソフトウェア開発 社員の働きがいを育む職場づくり
 テクノアでは、社員のキャリア蓄積が他社との差別化につながると考え、人材育成に注力。経営理念などを学ぶ「方舟研修」を年50回以上実施するほか、資格取得者への奨励金や、ビジネス書籍を揃えた「テクノア文庫」を設けるなど、社員が成長を実感できる環境づくりに取り組む。
 また、2011年から社員が自由に意見を出せる改善提案制度をスタート。同制度の提案により、20年に一般社団法人日本能率協会主催の「KAIKA Awards」へエントリーし、これまで培ってきた人材育成の取組みが「特選紹介事例」に選出されたことで、自社の魅力を再認識することができた。
 21年には、在宅勤務の増加で社員同士のつながりを感じる機会が減少していることを受け、社内交流委員会「どんぐり会」を発足。ゲームやスポーツ観戦など多彩な企画でコミュニケーションの場を設けている。メンバーでブランディング戦略室広報・企画担当の篠田光貴さんは「関わりの少ない部署の社員や新入社員などと交流を深める機会になっている」と話す。
 さらに地域とのつながりを深めるため、1990年にテクノアと岐阜の中小企業数社が集まり、地域住民に向けた観劇やコンサートを開催する「れんげ草くらぶ」を設立。社員が企画・運営を行い、30年にわたり毎年1~2回の市民招待公演を開催し、社員の地域貢献への意識向上につながっている。

 

◆花園福祉会 土岐市・保育 業務効率化と多様な勤務形態
 2018年度から保育向けの業務支援ツールや、保護者との写真共有ツールを導入し、職員にタブレット端末を支給するなどICT化を推進。自動的に職員の出退勤管理や園児の写真の仕分けが行われるほか、手書きだった事務作業をタブレット端末で進められるようになり、所定外労働時間を約50%削減した。保育士の山内千栄さんは「業務効率化で勤務時間内に仕事を終えられ、心に余裕ができた」と実感。所定外労働を申請する際は、上司が業務内容を聞き、アドバイスを送るようにしている。
 各種費用の助成も手厚く、インフルエンザ予防接種や幼稚園教諭免許の更新などに必要な費用を法人側が全額負担するほか、提携するスポーツジムを、職員は通常の4分の1程度の金額で利用できる。ほかにも、職員の交流を深めることを目的とした食事会では、参加しやすくなるよう費用補助の他に豪華景品が用意され、研修旅行では交通費を全額、宿泊費も一部助成される。
 子育て中の職員への働き方にも柔軟に対応。育児休業は子どもが3歳まで取得でき、子どもの年齢に関係なく短時間勤務やフレックス勤務できる。また、定期的に面談を行うことで悩みや生活状況をしっかりと把握。パート職員が正規職員と同様に退職金の積み立てが可能など、安心して働ける環境が整備されている。
 本人が希望すれば年齢に関係なく働くことが可能で、70歳を超える職員も多い。加藤隆浩事務長は「同じ職場の仲間を思いやり感謝することで働きやすい環境が整っていった」と話し、今後も家庭と仕事を両立しながら健康的に働ける職場を築く。

 

◆早川工業 関市・金属プレス加工 多様な人材が活躍できる職場
 早川工業では、多様な人材の活用を図るダイバーシティ経営に力を入れている。障がい者も働きやすい環境を整えるため、ジョブコーチの配置や保護者との面談を実施。性的少数者(LGBT)の受入れ環境も整備し、全社員への研修の実施や、同性婚を異性同士の結婚と同等に認めるなど、就業規則も改定。2017年には、LGBT理解のための研修などを行う団体からLGBTフレンドリー企業に認定された。
 また、20年からは多様な人材の活用のためITなど他業界からの兼業人材や、大学生の長期インターンをリモートで雇用している。兼業人材との新規事業として、工場の一角で廃材を使ったものづくりのワークショップを体験できる「ハレのシャコウ場」を立ち上げ、若い女性を中心に新たな客層を開拓。また、インターン生は営業や売上分析などを担っている。
 こうした取り組みに対し、初めは戸惑いの声もあったが、共に働く中で社員の意識が多様性に対し前向きなものに変化し、今では互いにとって良い刺激となっている。
 社員がやりたいことに挑戦できる環境も充実しており、若手社員が就業時間外に廃材を用いてアクセサリーなどを作り販売する部活動「ザオ・ファクトリー」を発足。同部はクラウドファンディングで資金を募り、製品の開発を行った。事業と離れた自発的な活動が、仕事のモチベーションにもなっている。
 男性の育児休業取得にも力を入れ、管理職への研修や社内報などで理解を深めている。10日間の育休を取得した製造部の川村昌孝さんは「家事などで妻のサポートができた」と話す。また、男女問わず家庭の事情や体調などにより定時で働くことが難しい場合は、勤務時間や日数を選択することができる。

 

◆ひがし福祉会 中津川市・障がい福祉 職員の要望や雇用形態に柔軟に対応
 ひがし福祉会では、職員の希望を把握して風通しの良い職場とするために、各部署の上司による年2回程度の面談を実施。さらに、入社間もない職員は、事務局が年に2~4回程度の面談を行い、仕事からプライベートまで気軽に話ができる場にしている。
 面談を通じて職員に寄り添った例として、事務職員が退職を考えていることを把握した際は、人と関わることが好きな特性を生かせたらと生活相談員を勧め、必要な資格が取得できるようにサポート。現在も生活相談員として勤務している。
 地域とのつながりも大切にしており、地域のお年寄りを招いた「敬老会」や子どもたちも参加する「生活の家まつり」などの行事を開催。生活の家まつりは多くの来場者があり、地域住民だけでなく職員の家族にとっても仕事場を見られる貴重な場にもなっている。コロナ禍で行事の実施が難しい状況でも、インスタグラムを活用し情報発信するなど、工夫しながら地域とのつながりを築いている。
 雇用形態では、育児、介護など家庭環境の変化や健康問題などで職員が働き方の変更を申し出た場合に柔軟に対応。正規職員から嘱託やパートに雇用形態を変えて働き続けることや、そこから正規職員に復帰することも可能で、中には復帰後、管理職として活躍する職員もいる。結婚、出産をきっかけに嘱託となり、現在は正規職員に戻って統括主任として働く林泉さんは「子どもが小さいうちは夜勤や変則勤務を外してもらうなどしてもらえてありがたかった」と職場の対応に感謝する。宇野正弘副部長は「今後もコミュニケーションを大切にしながら、職員の働く環境を整えていきたい」と話す。

 

◆ファミリー 可児市・自動車販売 お互いを尊重し感謝できる職場環境
 ファミリーでは、社員の提案により、複数の方法で発信していた各社員からの情報を一つのコミュニケーションアプリで発信できるように改善。日報の提出と「ありがとう」メッセージをアプリに切り替えたことから始まり、社長からのメッセージやマニュアル動画の共有など、さまざまなコミュニケーションがアプリを活用して行われている。
 育児休業中の社員も、子どもの様子などをアプリへ投稿。経営戦略室に勤務する女性社員は、2人の子どもの出産を経て職場に復帰したが「育休中もアプリで各社員の日報を見られて現場の状況を把握でき、自分の育児状況も伝えられて楽しく過ごせた」と話す。
 さらに、社員のスキルアップを図る取り組みとして、上司が自分のキャリアや失敗談をアプリを通じて全社員に発信。その他にも作業動画やマニュアル動画をアップしており、社員が空いた時間を有効に活用できる環境が整う。
 こうした取り組みの成果として、今では「ありがとう」メッセージは多い月に3000通を超え、日頃からお互いのことを気にかけ、感謝する職場の形成につながっている。
 地域貢献活動にも積極的で、ごみ拾いや中高生へのキャリア教育、防災備蓄品の購入などを行っている。2021年は、夏休みに社員と地域の子どもを対象とした学童保育を新たに行った。渡邉健実取締役は「家族のようなコミュニケーションを取れる仕組みをもっと増やしたい。社員が生き生きと働く姿をお客様に見せることで、会社の魅力が地域に広まってほしい」と話し、今後も風通しの良い職場環境を築いていく。

 

◆ヨシケイ岐阜 関市・食材宅配 業務効率化で家庭生活の充実を
 食材を配達するスマイルスタッフをすべて女性が担うヨシケイ岐阜では、家庭の充実こそが仕事の質向上につながると考え、業務効率化などの取り組みを進めてきた。従来は各営業所でスタッフを一括管理してきたが、7年前から5~6人の少人数の班をつくり、リーダー職を配置。リーダーを中心に細やかな教育指導や配達ルート見直しなどの業務改善が可能となり、労働時間の短縮やスキルの均一化を図ることができた。時間に余裕が生まれたことで、スタッフが互いに業務を助け合うようになり、月平均30時間だった所定外労働時間は、今では0・1時間まで減少している。
 さらに、スタッフ全員にスマートフォンを支給し、それまで紙で扱っていた顧客情報や配達票を電子データで一元管理できるアプリを導入。効率的な順番で配達が可能になったことに加え、情報を共有することで、急に休む際にも他のスタッフがスムーズに仕事を引き継げるようになった。
 人材教育にも力を入れ、入社後約3カ月間はリーダーがマンツーマンでサポートするほか、個人面談でフォローアップを行っている。このほか、年4回営業成績などによる評価給を支給する際には、管理職が面談を実施。スマイルスタッフの後藤綾香さんは「1対1で仕事や家庭の相談ができ、また頑張ろうというモチベーションにつながっている」と安心感を伝える。
 このほか同社では、誰もが健康で、はつらつとして働くことのできる職場づくりを目指し、定期的にスポーツジムのインストラクターによる健康教室を実施するなど、心身の健康サポートにも努めている。

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