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2024/08/13  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 児童虐待ゼロの社会に

 厚労省の調べによると、全国の児童相談所における虐待相談対応件数は、一貫して増加を続けている。虐待には、たたくなどの暴力や拘束を受ける身体的虐待だけでなく、怒鳴りつける、子どもの心を傷つける暴言をはく、言葉による脅しなどの心理的虐待、性的行為を強要する性的虐待、食事を与えないなどのネグレクトなども含まれる。中には、虐待によって命を落とす事件も発生しているほか、追い詰められて自殺につながるケースや、成長期に受けた心身の傷に苦しみ続ける場合もある。特に近年は、長引くコロナ禍の影響で、失業や収入減などに陥ったり、自宅で家族と過ごす時間が長くなったりすることで、不安やストレスが暴力の引き金になることも懸念されている。虐待は、誰の身近でも起こり得る問題。毎年11月に定められた「児童虐待防止推進月間」を前に、県や民間団体等が行う活動やサポートを知り、児童虐待をなくすために私たちができることを考えたい。

 

◆昨年度の県子ども相談センター 児童虐待相談、過去最多に 国はSNSでの相談アカウントを開設へ
 県内5カ所にある県子ども相談センター(児童相談所)が対応した「児童虐待相談対応件数」は、2390件と過去最多となった。この数値は、対前年度比で5・4%増にあたる。
 相談内容を見ると、言葉による脅しや無視、目の前で家族に暴力をふるうなどによる「心理的虐待」が、最も多い1218件と全体の51・0%を占め、「身体的虐待」が810件(33・9%)、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が319件(13・3%)となっている。年齢別では「7~12歳」が37・3%の891件と最も多く、「3~6歳」が599件(25・1%)、「0~3歳未満」が395件(16・5%)と続く。主な虐待者は「実母」が45・1%、「実父」が42・3%とほとんどを占めた。
 相談に至った経路としては「警察等」が最も多く、次いで「市町村」や「学校」など身近な相談窓口が並ぶ。県は県民に児童虐待への理解が浸透してきたことも、件数の増加につながっていると見ている。実際、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」の周知も進み、虐待が重篤化する前の段階での通報が増加傾向にあり、保護者等への面接指導も件数が増えているという。
 こうした状況下で、県は子ども相談センターを中心に、虐待の発生予防から早期発見・対応、再発防止、子どもの自立まで、切れ目ない支援に努めている。新型コロナウイルス感染症に起因する児童虐待の深刻化を防ぐため、2019年度から全子ども相談センターでは全虐待ケースの見守り確認を継続的に実施。今後も、福祉・教育・司法・医療など各機関のネットワークを活用して情報共有や連携を図るほか、研修会による人材育成などにも注力していく姿勢だ。
 国も現在、児童虐待防止対策の総合的・抜本的強化策として、SNSを活用した全国一元的な相談の受付体制構築を進めている。これは、全国どこからでも相談できるSNSの全国共通アカウントを開設し、各自治体または各児童相談所がSNSを通じて相談に対応する仕組みで、2023年2月の運用開始を目指す。

 

◆虐待防止の心をつなぐ オレンジリボン運動 来月6日にたすきリレー
 11月は厚労省が定める児童虐待防止推進月間。それに合わせて全国各地では、児童虐待防止のシンボルであるオレンジリボンを用いた啓発イベントが行われる。
 県内では、オレンジ色のたすきをつなぐ「第15回岐阜オレンジリボンたすきリレー」が11月6日に開催される。新型コロナウイルス感染症拡大で多くのイベントが中止される中、主催するオレンジリボン岐阜ネットは「虐待防止運動に中止はない」との強い思いで、形を変えながら活動を継続させてきた。昨年は、約400人がオレンジの傘でリボンと児童相談所虐待通報ダイヤル「189」の文字を作る「オレンジリボン人文字イベント」を行った。
 今年は、3年ぶりにたすきリレーを再開。県庁を出発点に、7~10人ほどのチームがそれぞれ4キロほどを走る駅伝形式でたすきを渡し、ゴールの岐阜市の長良川競技場を目指す。ゴールの長良川競技場では、県内市町村のマスコットキャラクターが啓発グッズを配布しながら、オレンジリボンをPR。また午後からは、ちびっこプロレス教室やチャリティープロレスが開催され、子どもたちに元気を届ける。同日に行われるFC岐阜のホームゲームでも、ハーフタイムに虐待防止を訴えるフラッグやのぼり旗を持ってトラックを回る「オレンジリボンキャラバン隊パレード」で、オレンジリボン運動の重要性を伝える。
 このイベントの前夜には、虐待によって命を絶たれた子どもたちに向けた「黙祷の集い」を長良川競技場近くの長良川公園で開催予定。公園内の河川敷にキャンドルと竹製の行灯を並べ、鎮魂の祈りをささげる。同団体会長で事務局のある子ども家庭支援センターぎふ「はこぶね」の長縄良樹統括施設長は「児童虐待根絶に向けて、心を一つにする機会にしたい。ぜひ多くの人に参加してほしい」とメッセージを送る。
 イベントの問い合わせや申し込みは、オレンジリボン岐阜ネット事務局、電話058(296)2172。

 

【オレンジリボン運動】 2004年に栃木県小山市で2人の幼い兄弟が暴力を受けた末、橋の上から川に投げこまれて亡くなったことから、地元団体が二度とこのような事件が起こらないようにと始めた児童虐待防止運動。

 

◆児童相談所虐待対応ダイヤル 189(いち・はや・く)でSOSを 通話料無料
 県では、虐待を発見した時や、虐待ではないかと疑われる場合、速やかに相談や通告ができるよう、児童虐待に関する通報を24時間体制で受け付けている。児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いち・はや・く)」は、電話すると通話料無料で近くの子ども相談センターにつながる。匿名での相談・通告も可能だ。


 固定電話からかけた場合、発信した電話番号から管轄が特定され、子ども相談センターへ転送される。携帯電話からは、オペレーターが発信者の居住地情報を聞き、管轄を特定して転送する仕組みになっている。
 子どもたちにも広く「189」を知ってもらうため、県では清流の国ぎふマスコットキャラクターのミナモが描かれたカードを作製。本年度はデザインを新しくした。小学生向け、中学生向け、高校生向けと3種類が用意されたカードでは、「お家で嫌なことがあったら、189番に電話してね」など、それぞれの年代に合わせたメッセージで相談を呼びかける。カードは県内全ての小中高校で配布される。
 また、子育てに悩んだ時に保護者らが相談できる児童相談所相談専用ダイヤル0120(189)783も、昨年から通話料無料となっており、県では189と同様に活用を促している。

 


ぎふ女のすぐれもの 社会問題への関心が形に

 

◆清流の国ぎふ 女性の活躍推進フォーラム 女性考案の4つの商品 「すぐれもの」に認定
 女性が企画・開発に携わった商品・取組の中から優れたものを県が認定する「ぎふ女のすぐれもの」。2018年度に始まり、これまでに24の商品や取組が認定を受けている。本年度は22件の応募があり、有識者による厳正な審査を経たうえで4つの商品が選ばれた。認定式やトークセッションなどを行う「清流の国ぎふ女性の活躍推進フォーラム」が8日、不破郡関ケ原町関ケ原の関ケ原ふれあいセンターで開かれ、女性たちの創意工夫に富んだ取組をたたえるとともに、さらなる飛躍に向けてのヒントを探った。

 

◆「一歩踏み出すエネルギーに感動」「自然体で問題解決につなげている」 審査委員らが感嘆
 フォーラムでは、古田肇知事が本年度の認定品をたたえ「『ぎふ女のすぐれもの』は岐阜のすぐれものを見つけて発信すること、そして優れた岐阜の女性を見つけ発信するという2つの目的で実施している。岐阜の発展はぎふ女なくしてあり得ない。このフォーラムを通じて、明日からでもぎふ女の一人一人が自分らしく何かやってみようというエールになれば」とあいさつ。認定を受けた代表者に美濃手すき和紙でできた認定証を東濃ひのきの額に入れて手渡した。
 認定審査委員4人が登壇した講評で日本ホリスティックビューティ協会代表理事の岸紅子氏は「生きづらさを抱える人びとへの優しさや郷土の価値を後世に残す気概にあふれた取組など、コロナ禍が続く困難な中でも一歩前に踏み出す女性たちのエネルギーに感動した」と話した。認定審査委員会副座長で、ぎふ女のすぐれもののアートディレクターとしてパンフレットなどの制作やデザインを担当したDesignWater代表の鷲見栄児氏は「取材でリアルな世界を拝見した。共通していたのは、力が入りすぎず自然体なところ。仕事と暮らしがスッとくっつき、かつ見事に社会問題の解決につながっている。このスタイルがこれからのスタンダードになるのでは」と未来を見据えた。清流の国ぎふ女性の活躍推進会議座長で県経営者協会会長の山口嘉彦氏は、審査員を務めたのは初めてとした上で「最終審査でほとんどの方がこの4点を選んだ。素人から見てもずば抜けた力と光るものがあった」とたたえた。認定審査委員会座長を務めるFifty代表取締役の佐藤美加氏は「さらに進化させて発信し続けていく点が認定を受けた人たちのすばらしいところ。一緒に考え、より多くの人に魅力を伝えるお手伝いをしていきたい」と代表者らに語りかけ、さらなる発展に向けたエールを送った。

 

◆坪内知佳氏×佐藤美加氏×古田肇知事 女性の生み出す価値探る トークセッション
 トークセッションでは、GHIBLI代表取締役の坪内知佳氏をゲストに迎え、佐藤美加氏、古田肇知事が登壇。佐藤氏が司会を務め、「女性が生み出す新たな価値」をテーマに意見を交わした。
 坪内氏は福井県出身。移住先の山口県萩市で“荒くれ漁師”をまとめ上げ、衰退していた漁業の再生に貢献した女性として注目を集めた。5日から坪内氏をモデルにしたドラマ「ファーストペンギン!」が日本テレビでスタートしている。
 佐藤氏は、腰の重い漁師たちを動かした坪内氏に「人を変化させることはとても難しい。そのエネルギー源はどこにあったのか」と質問。坪内氏の著書を2冊読んだという古田知事も「漁師との深い絆を感じるエピソードに感動した。第2、第3の坪内氏を生むには」と質問した。坪内氏は「何もしなければ、真剣に問題と向き合うのは倒産するときだと思った。その後悔を絶対させたくないし、自分もしたくない。重要なのは腹を割って話すこと。本音が出るまで何時間でも話し合うこともあった」と答えた。佐藤氏は「女性ならではの潔い考え方が、こじれた糸をほどく力があるのでは」と説いた。
 また坪内氏は、自身がアレルギーに苦しんだ経験から「安全安心な一次産業を作りたい思いがあった」とし、「海の環境汚染には、生活排水が深く影響する。目を背けず、0・1ミリずつでも行動を刻んでほしい」と環境への配慮を求めた。佐藤氏が「岐阜は資源が豊かで水もきれい。環境について考える代表的な県になり得るのでは」と投げかけると、古田知事は「清流長良川の鮎」が世界農業遺産であることや、昨年の「持続可能な観光地100選」に長良川流域が選ばれたことを紹介した。
 最後に、古田知事は「これまでの人口流出の中心は20代女性で、就職が主なきっかけ。ただコロナ禍を経て価値観が変化し、仕事の場所は都市に限らず選べるようになった。つまりアフターコロナで重要なのは女性に選ばれる場所を提供できるかどうか。多くの女性に岐阜を選んでいただけるよう、今後も後押ししたい」とし、女性のさらなる活躍に期待を込めた。

 

◆会場ロビーで認定品を紹介
 会場となった関ケ原ふれあいセンター1階ロビーの町民ギャラリーには、本年度認定を受けた「ぎふ女のすぐれもの」の商品や、熱い思いについて書かれた大型パネルが展示された。女性の活躍推進フォーラムの開演前後には、開発に携わった女性自らが来場者らと積極的に交流する様子も見られた。
 隣接する岐阜関ケ原古戦場記念館別館売店には特設売場が設けられ、本年度の認定品を含む14商品を販売。同日に関ケ原町一帯で始まった「大関ケ原祭」に訪れた客らも足を止め、工夫の凝らされた商品を熱心に見入っていた。

 

◆本年度認定品
 フードロスや障がい者の雇用などの社会問題から日々の掃除、伝統食の活用まで、それぞれの視点から生まれ、本年度の「ぎふ女のすぐれもの」として認定を受けた4商品を紹介する。

◇トマトづくしギフト ジバスクラム恵那
 トマト栽培が盛んな恵那山麓の6農家がそれぞれ作ったトマトソースやジャム、クッキーなどを詰め合わせてギフトに。規格外や出荷できないほど完熟したトマトを有効活用することでフードロス削減に一役。(5000円)
一般社団法人ジバスクラム恵那
恵那市大井町293-9
https://www.enasanrokuyasai.com/

 

◇キッチンブラシ 赤田刷毛工業
「そうめんの湯切り時のザルのぬめりを手早く落としたい」という思いがきっかけ。2種類の植毛を絶妙なバランスで調整して、「汚れは落ちるけれど調理道具は傷つかない」を実現させた。持ち手には東濃ひのきを使用。(1650円)
赤田刷毛工業株式会社
中津川市加子母3356-3
https://akada-brush.co.jp/

 

◇蔵のある町屋の宿「帰蝶(きちょう)」 サステイナブル・サポート
 就労継続支援B型事業所アリーが運営する一日一組限定の一棟貸しの宿。精神障がい・発達障がい等を抱えた女性が、ベッドメイキングや清掃などを担当。周囲の配慮や理解により自信を取り戻す場となっている。(一室一泊33000円~)
蔵のある町屋の宿「帰蝶」
岐阜市玉井町36-1
https://kichou.org/

 

◇飛騨えごまの小宿 萬里 萬里
 50年続く民宿が今春、えごまに特化した宿としてリスタート。こだわりの自社製造の飛騨えごまを、宿で振る舞う料理に贅沢に使用する。伝統食である飛騨えごまの魅力を未来へつなぐ。(一泊二食・大人一人8700円~)
飛騨えごまの小宿 萬里
高山市上岡本町4-93
https://banri.com/

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