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2024/08/13  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 「誰もが働きやすく」を実現 県WLB推進エクセレント企業

 

 県では2011年度から、仕事と家庭の両立支援や魅力的な職場環境づくりなどに力を入れている企業の中で、特に優良な取り組みや他社の模範となる独自の取り組みを行う企業を「県ワーク・ライフ・バランス(WLB)推進エクセレント企業」として認定。昨年度までに182社が認定を受けている。
 取り組み内容はさまざまで、年齢や国籍、障がいの有無に関わらずに戦力になれるよう工夫したり、子育て支援やメンタルケア、情報通信技術(ICT)の活用に力を入れたりと、これからの時代を駆け抜けていく上でヒントとなる事例も数多い。

 

◆昨年度は12社を認定 「人に仕事を合わせる」時代へ
 昨年度は、建設や医療・福祉、小売などから12社を新たに認定。企業の特性に合わせた独自の視点から働きやすさを実現させたケースが相次いだ。公園等でイベントやショップ運営などを行っている日本イベント企画は、運営イベントの招待券等を社員に渡したり子連れ出勤を認めたりして、勤務日でも家族との時間を過ごすことができるように配慮。高齢者・障害者向けの通所施設や保育園等を運営する多治見市社会福祉協議会は、現場での業務に誇りを持つ専門職を尊重するため、希望する職員のみが昇格試験を受けるようにしたり、仕事上の悩みをため込まないでいられるよう面談をこまめに行ったりしたことがメンタルケアにつながっているという。実際、この数年間、心の病を理由にした休職者や退職者は出ていない。70歳以上の職員が職場の配慮によって生き生きと活躍する好事例も複数あった。
 2月には県庁のミナモホールで認定式が開かれ、大森康宏副知事が各社の代表に認定証を手渡した。
 講評にはダイバーシティコンサルタントで認定審査会の渥美由喜委員長が登壇し、それぞれの評価ポイントについて説明。「エクセレント企業の多くが、人に仕事を合わせている。その人が一番能力を発揮できる職場はどこだろうかとカスタマイズしていく会社の姿勢が大切」などと話し、さらなる取り組みの発展に向けてエールを送った。

 

◆県WLB推進エクセレント企業 申請等の問い合わせ、相談
県男女共同参画・女性の活躍推進課
電話 058-272-8237
メール c11234@pref.gifu.lg.jp

 

◆2022年度の認定企業(五十音順)
医療 梶の木会(可児市)
福祉 柊和会(揖斐郡揖斐川町)
医療 神明会(美濃加茂市)
製造 ダイアトップ(郡上市)
福祉 多治見市社会福祉協議会(多治見市)
卸売、小売 中部事務機(岐阜市)
卸売、小売 中部薬品(多治見市)
建設 T3(大垣市)
建設 内藤建設(岐阜市)
サービス 日本イベント企画(大垣市)
建設 HAGIホーム・プロデュース(大垣市)
福祉 擁童協会(揖斐郡大野町)

 

◆認定を受け、こんなメリットがありました♪
 これまでに182社が認定を受けている県WLB推進エクセレント企業。認定を受けたことで求人や従業員の意識等にどんな変化があったのかなどを2社の担当者に聞いた。

 

【善心会 福祉】
▼働き方改革、より一層進化
 2017年度に認定を受けた善心会は、安八郡神戸町内で特別養護老人ホーム「ラック」と地域密着型複合施設「りんどう」を運営。働き方改革には長年にわたって積極的に取り組んでおり、育児や介護中の職員に対して休暇制度を設けたり、ライフステージに合わせてフルタイム、短時間、パートを柔軟に選べるようにしたりしていた。休みは月10日ほどあり、残業もほとんどないという。
 ラックの小島隆之介施設長は「求職者対象の合同説明会などの際はエクセレント企業ののぼりを持って行くようにしており目を引く。エクセレントの認定は『長く働ける職場』を探す若い人たちに向けて大きな武器になっていると感じる」と認定を受けたメリットを話す。
 既存の職員に対しても認定の前後で変化があったと言い、「必要な人員配置数ではなく、WLBを実現するための職員数を確保しているため、もともと有休等は取りやすいが、それでも遠慮する人がいたのは事実。エクセレント企業に選ばれたことは職員がWLBについて正しく理解する契機となり、みんなが『休暇を取りたい』と言えるようになった」と話す。
 一方で、「確かに職員にWLBという概念は浸透したし、『いつでも休める』職場づくりを実現できた。しかしシフト勤務である以上、穴を空ければ他の職員に負担がかかるのは当たり前のことで『いつでも休んで良い』という意味ではない。そしてフォローする側は大抵同じ人で、『おたがいさま』になっていない」と働き方改革が進んだことで新たな課題に直面。このため、勤続年数に応じて取得できるリフレッシュ休暇(勤続3年で連続3日間、5年で5日間など)を、フォローに回ることの多い職員から順番に、取りたいタイミングを選んでもらうことで職場からの感謝の気持ちを表す制度を近々始める予定。小島施設長は「エクセレント企業の認定を受けたことで、より働きやすい職場になるためのさらなる気付きを得られた。これからも個別ニーズに寄り添いながら誰もが働きやすい職場づくりを進めていきたい」と話している。

 

 

【三承工業 建設】
▼挑戦が定着。社員が能動的に
 岐阜市に本社を置く建設会社の三承工業は、子どもと一緒に出勤して世話をしながら働く「カンガルー出勤制度」を2013年に導入。子どもを産んだ女性のほとんどは「子どもを預ける」もしくは「働くのを諦める」の二択を余儀なくされる中、第三の選択肢を提示しようという気持ちから始めた。現在は本社と支店合わせて4人が日常的に制度を活用。2歳の子どもと出勤しているダイバーシティ推進室の山田更紗さんは「制度のおかげで、生後7カ月で職場復帰できた。集中して取り組みたい仕事は子どもの昼寝中に取り組むようにするなどし、メリハリを付けて働けている」と話す。
 カンガルー出勤制度の導入を皮切りに、男性中心の建設業であっても女性も活躍できる職場づくりに注力。16年には、育児中の社員らで「チーム夢子」をつくり、子育てで得た視点を生かしたモデルハウスづくりをするなど大きな成果につながっている。これらが評価され、16年度にエクセレント企業の認定を受けた。21年には厚労相が女性活躍に取り組む事業者を認定する「えるぼし」に選ばれた。
 ダイバーシティ推進室の神田純代係長は「最初に岐阜市の男女共同参画優良事業者表彰を受け、その後の県のエクセレント企業の認定が大きな自信になった。女性活躍の次は働き方改革、その次はSDGsへと目線が向き、ジャパンSDGsアワードなど数々の認定や表彰につながった。国連のサイトにもグッドプラクティス企業として載せていただいた」と、エクセレント企業の認定が、企業として上を目指す原点になったことを振り返る。また、新たな挑戦や申請の準備の過程は、普段の業務ではあまり接することのない社員同士の共通体験となり、結果として社員同士の距離が縮まり、働きやすくなったというメリットも挙げる。
 数々の取り組みは新聞やネットなどに取り上げられ、採用につながっているのはもちろん、視察や相談、西岡徹人社長への講演依頼も相次ぐ。「いろんな挑戦をすることで、社員がどんどん能動的になっていく」と神田係長。エクセレント企業等への挑戦などを機に一歩踏み出すことの意義に力を込める。


「誰もが働きやすく」を実現 県WLB推進エクセレント企業

 

◆保育士に「なる」「続ける」を応援
 幼い子どもを育てながら働く保護者にとって、保育所は育児と仕事の両立に欠かせない大きな味方。慢性的な保育士不足が続いている今、保育士の確保は簡単な問題ではないことから県は、岐阜市薮田南のOKBふれあい会館内に県保育士・保育所支援センターを設け、仕事を探している保育士資格保有者と保育所のマッチングを行っている。新たに資格取得を目指す人の支援や「潜在保育士」の掘り起こし、現役保育士から相談受け付けなどにも力を入れ、さまざまな視点から保育所と保育士をサポートしている。

 

 

《県保育士・保育所支援センターの取り組み》
▼職業紹介、9割超が成立 求職者と保育所をつなぎ調整
 県保育士・保育所支援センターの主な業務は、保育所・認定こども園等に就職を希望する方と、求人募集をする保育所・認定こども園とのマッチング、保育の仕事の魅力発信、保育の仕事に関する悩み相談など。全てにおいて、公立だけでなく私立の保育所やこども園等も対象。有資格者らからの保育士登録は随時募っており、ハローワークや各自治体などとも協力して就職のマッチングを実施し、保育所を支えている。センター利用料や保育士登録料、紹介料はかからない。
 センターの職員の多くは、保育所での勤務経験者。保育所への就職を希望する相談者に対しては、保育士としての視点を交えながら丁寧にニーズを聞き出している。相談員は「『短時間だけ働きたい』『週3日だけ働きたい』などの声は多い。認可保育園における保育標準時間は11時間あり、正職員だけではまかなえないため、短時間勤務のニーズは高い。特に朝夕の時間帯は重宝されているため活躍の場は多い」などと話す。センターは保育所側ともしっかりと調整を重ね、双方が納得できた段階での就職となるため、昨年度は紹介した144件中132件が就職という、9割を超える高いマッチング率だった。

 

 保育の仕事の魅力発信で柱としている取り組みが「保育のしごと」見学会。一般向け、中高生向けに分けて実施している。一般向けは、保育所で働くことを検討している人(資格の有無は問わない)が対象で、保育所の様子を見学してもらったり、現役保育士から話を聞いたり、子どもたちに人気の手遊び歌を学んだりして「ブランクがある」「最近の保育のしごとがわからない」などの漠然とした不安を和らげ、一歩踏み出してもらうのが狙い。
 これまでに、潜在保育士はもちろん、自身の子育てを通して保育士の仕事に興味を持ち、資格取得を考えている人も数多く参加。「保育の現場で働いたことがないため、今からでもできるのかなと不安に感じていたが、相談できる環境が整えられており、一歩踏み出す勇気が持てた。資格の勉強を頑張りたいという気持ちが強くなった」「先生方が生き生きと楽しそうに働いている姿や、保育士のやりがい・魅力を知ることができた」などの声が上がる。一般向けは本年度、6月20日の蜂友学舎保育園(美濃加茂市)を皮切りに、15カ所で行う。
 中高生向けには主に夏休みに、保育所見学と保育が学べる大学・短期大学を回るバスツアーとして開催している。
 他にもセンターでは、現役保育士・保育所の支援にも力を入れており、さまざまな相談を電話やオンラインで受け付けている。また、保育の現場におけるリーダー的職員の育成を図るためのキャリアアップ研修も開催しており、保育士がスキルアップをしながらやりがいを持って長く働ける環境づくりを支える。

 

 

◆夢をかなえた「週1勤務」 センターが就職サポート 平日の別の仕事と両立 
 子育てがひと段落したタイミングや、育休中などに思い立って、独学で保育士資格の取得に向けた勉強に励む人は珍しくない。瑞穂市のいな穂すくすく保育園で昨年7月から働く保育士もその一人。保育士を志したきっかけややりがい、県保育士・保育所支援センターとの関わりなどをうかがった。

 -保育士を志したきっかけは。
 短大で幼稚園教諭の資格を取りましたが、漠然とした不安から全く違う仕事を選びました。しかし「子どもと関わる仕事がしたい」という思いはずっと持っていました。
 一歩踏み出したのは5年前。目黒女児虐待事件の報道を見てショックを受け、自分にできることはないかと。ちょうど下の子が大学進学で家を出たタイミングでしたので保育士を目指すことにしました。平日は事務の仕事があり、その合間をぬって市販の教材のみで勉強しましたので時間がかかり、昨年4月の試験でやっと資格を得ることができました。
 -センターを利用したきっかけは。
 21年秋にセンター主催の保育士試験対策講座を受講したのが最初です。苦手科目を無料で教えてもらえ、ありがたかったです。その縁で「保育のしごと」見学会にも参加。実際の保育現場を見たことで、夢への思いが強くなりました。
 -いな穂すくすく保育園を選んだ理由は。
 昨年7月から土曜日だけ働いています。フルタイムで保育士をする自信がまだなく、今でも平日の事務の仕事は続けています。合格する前から土曜日のみという希望はセンターに伝えていましたので、条件に合っているところとして紹介してもらいました。レベルの高い先生ばかりのすばらしい園で働けてうれしく思っています。
 -やりがいや大変なことは。
 園児と一緒に笑い合えることにやりがいを感じています。大変なことは、子育てと保育は全く違うという点です。自分の子であれば、何ができて何ができていないのかがわかりますが、園児とは週1回しか会わないのでそこを把握するだけでも一苦労。手を貸すタイミング、見守るタイミングの見極めも難しく、周りの先生方には助けてもらってばかり。帰り道はいつも、一人で反省会をしています。
 落ち込むことも多くありますが、それでも保育の仕事は本当に楽しいです。勉強を始めてから就職までに4年もかかってしまいましたが、挑戦して良かったです。

 

■県保育士・保育所支援センター
相談やハローワークでの出張相談会の予約など
電話 058-214-8902
岐阜市薮田南5-14-53、OKBふれあい会館
開所日時 平日午前9時~午後5時

 

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