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2024/08/28  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 母子も父子も…ひとり親家庭をサポート

 

◆県ひとり親家庭等就業・自立支援センターの取り組み
 県が5年に一回行っている「県ひとり親家庭実態調査」(前回実施は2018年10月)によると、総世帯数81万9175世帯のうち、母子世帯1万7720世帯(出現率2.16%)、父子世帯1329世帯(同0.16%)で、ひとり親世帯数は計1万9000世帯ほどに上る。同調査での困っていることについての問いには、母子・父子共に「生活費」を挙げる人が最も多く、母子世帯の67.3%、父子世帯の61.3%を占めた。続いて「子育て・教育」「仕事」が挙げられた。母子世帯の年間就労収入は「100~200万円未満」が37.6%と一番多く、「200~300万円未満」が26.2%で、約4割が臨時・パートで就労していた。
 前回調査を行った5年前よりも物価は高騰し、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックもあったことから、生活費や仕事に関連した困りごとは深刻化しているのではという懸念もある。
 今回は、母子、父子問わずひとり親の悩みに寄り添い、仕事と子育ての両立をサポートしている県ひとり親家庭等就業・自立支援センター(岐阜市薮田南、OKBふれあい会館内)の取り組みについて紹介する。

 

◆ひとり親同士 共有の場 ひとり親カフェ 講演会と交流会で心軽く
 県ひとり親家庭等就業・自立支援センターでは、ひとりで子育てや仕事などをしているひとり親同士が思いを共感し合える場を設けようと、2019年から「ひとり親カフェ」を行っている。今年は9月9日と10月21日にOKBふれあい会館内で対面とオンラインで開催。9月9日は、「ママの心にゆとりと愛を」をコンセプトに全国でイベント等を行っているNPO法人日本ウーマンプロジェクトの毛利理恵理事長によるオンライン講演会「子育てを通して心を軽くする方法」と、参加者同士の交流会が開かれた。
 講演で毛利氏は、子どものマイナス面に対して目を向けるよりも、プラスの部分を認めて伸ばしていくことの大切さを話し「子どもの良さを言える親は、自分の良さにも気付けるようになる。子どもの良いところを10個みつけて、一日一個ずつでも子どもに伝えたり『幸せだね』と言い続けてみては」と呼び掛けた。
 交流会は、対面とオンラインのそれぞれでファシリテーターを交えて実施。対面には1歳から20代までの子どもがいる6人が参加した。講演会の感想をそれぞれが話した後、思春期の男の子を育てる上での苦労や、学校との関わり方などの話題で盛り上がった。
 小学生の子どもを2人育てる女性は「周りにシングルの人がいないので、共通点のある人同士で話してみたいと思い初めて参加した。話したり講演を聞いたりしたことで、凝り固まっていた考えが随分とほぐされて気持ちが楽になった」と話していた。中学生と小学生の子どもを育てる女性は「シングルになって日が浅い上、学校でのトラブルもあって余裕がなかった。講演を聞いて、子どもにまずは『幸せだね』と言い続けてみることでどう変わっていくかを試してみようという前向きな気持ちになれた。全て、こういう講座に出てみないとわからないこと。同じ境遇の人と話せる機会は重要。また参加したい」と笑顔を見せた。

 

◆次回は10月21日 参加者募集
 次回、10月21日は午後1時30分から2時間を予定。講師は、公認心理士でシングルマザーや女性を応援する任意団体「女性の社会生活活動部フルード」代表の木村真佐枝氏で、講座のテーマは「シングルマザーこころのケア講座」。9月9日同様に、講演のあとに交流会が開かれる。参加希望者は10月11日までに同センターまで申し込む。

 

◆就業・自立支援から子育て相談まで 離婚の前・後支える
 県ひとり親家庭等就業・自立支援センターは、仕事と育児の両立に悩むひとり親に向けて、就業情報の提供や就職に有利な資格取得のための講習会の開催や養育費・面会交流の取り決めの相談などの就業・自立支援から、子育てを含む生活全般の悩みの相談まで、幅広い支援を行っている。
 2022年度に同センターに寄せられた相談件数は3265件(21年度3122件)。堀秀子センター長によると、離婚を考えている方からの相談が多いと言い、「いち早く離婚したいという一心で動き、後悔する方を見てきた。子どもにとって親の離婚は言うまでもなく一大事。大きくなったとき『養育費をきちんともらえていた』という事実があるだけでも気持ち的に全く違うので、子どものためにしっかりと整えてほしい」と呼び掛ける。センターでは、弁護士による養育費や債務、財産分与などの相談、ファイナンシャルプランナーによる家計個別相談などを実施し、個別のケースに寄り添っている。
 就職支援については、じっくりと相談に乗ることはもちろん、ハローワークとも連携した求人情報の提供や岐阜市在住者を対象にした面接等に必要なスーツ等の貸し出しもある。10月7日と11月25日には就業支援セミナーを予定しており、職場を明るく元気にするために求められるコミュニケーション力についてや、最近の求人情報についてなどを学ぶことができる。同センター主催の講座はすべてオンラインでの受講が可能。OKBふれあい会館会議室での参加の場合は無料託児を利用することもできる。
 資格取得のための講習会は、主に毎年4~5月に受講者を募集。介護職員初任者研修や実務者研修、日商簿記3級講座、准看・看護学校等受験対策個別支援などがあり、受講料は無料(テキスト代、検定試験受験料は実費)。県内各地で開講していたり、オンラインで受けることができたりなど、人気が高い。堀センター長は「センターへの相談者の多くが女性だが、男性ももちろん可能。特にシングルファザーの方は、身近に同じ境遇の人がいないことが多くて孤立しがち。セミナー等に限らず生活全般について気軽に相談していただければ」としている。

 

◆養育費のルール 法律面から説明 10月、12月に講習会
 離婚に向けて悩んでいる方に法的な知識を正しく知ってもらおうと県ひとり親家庭等就業・自立支援センターでは、10月14日と12月16日の午後1時30分から、OKBふれあい会館とオンラインのハイブリッド方式で養育費等講習会を行う。
 講師は、東京都が行っている「離婚前後の法律相談」の相談員で弁護士の紙子陽子氏で、紙子氏はオンラインで講演する。10月14日が基礎編で、12月16日は発展編。一方だけの参加も可能。締め切りは各開催日の10日前で、センターホームページから、または電話で申し込む。

 

◆LINE登録で最新情報GET
 県ひとり親家庭等就業・自立支援センターでは、公式LINEを運用しており、友だち登録をすれば、受付中の講習会等の情報が随時送られてくる。
 これまでに送られた内容は、ひとり親支援施策リーフレットや別居・離婚時リーフレット、子育て世帯への臨時特別給付金情報など。同センターのイベントや、地域の学習支援教室の情報などもある。IDは「@196kqtla」。

【市・県事務所等でも、ひとり親の相談受け付け】
岐阜県内の市にお住まいの方→市役所のひとり親担当課
岐阜県内の町村にお住まいの方→町村のひとり親担当課または以下のところ
岐南町・笠松町・北方町の方→岐阜地域福祉事務所 電話058-272-8215
養老町・垂井町・関ケ原町・神戸町・輪之内町・安八町の方→西濃県事務所 電話0584-73-1111(内線481)
揖斐川町・大野町・池田町の方→揖斐県事務所 電話0585-23-1111(内線243)
坂祝町・富加町・川辺町・七宗町・八百津町・白川町・東白川村・御嵩町の方→可茂県事務所 電話0574-25-3111(内線247)
白川村の方→飛騨県事務所 電話0577-33-1111(内線274)

 

◆県ひとり親家庭等 就業・自立支援センター
住所 岐阜市薮田南5-14-53
   OKBふれあい会館第2棟9階
電話 058-268-2569
開所 月~土曜午前9時から午後5時
※祝日、年末年始、OKBふれあい会館休館日は休み
※予約制で夜間相談あり


家庭のぬくもりを子どもたちに 里親制度を紹介

 

◆255世帯が里親登録 昨年度県内 要保護児童に対し不足
 貧困や虐待、病気など、さまざまな事情で自分の家族と暮らせない子どもを家庭に迎え入れ、実の親の代わりに育てる里親制度。子どもたちの健全な成長や、明るい未来のために重要な存在とされているものの、要保護児童の数に対して足りていないのが現状だ。厚労省が定める10月の「里親月間」を前に、今回のはぐくみのわでは里親制度について考えていく。

 それぞれの事情で親と離れて暮らす要保護児童の数は、厚労省によると全国に4万2千人ほどいるとされ、その多くが児童養護施設や乳児院等で生活している。2016年の児童福祉法改正で、国が家庭養育優先原則を打ち出したことから、子どもたちが家庭のぬくもりを感じられる里親との生活ができるよう、国や自治体ではさまざまな調整を続けているものの、22年3月現在の厚労省の福祉行政報告例によると、実際に里親に委託されている児童数は6080人にとどまっているのが現状だ。
 岐阜県の22年度末時点での要保護児童の数は502人。255世帯が里親登録し、79人が里親の元で生活している。前年度と比べ登録数は17世帯が増加したものの、里親の元で暮らす子どもの数はほぼ横ばい。県の担当者は「まだ15・7%しか里親に預けることができていない。この数字を6年後までに41・7%にすることが目標」としている。
 里親と一言で言っても、実親と暮らせない子ども(原則18歳未満)を一定期間家庭に迎え入れて養育する「養育里親」、養子縁組を前提とする「養子縁組里親」、虐待や非行、障がいなどの理由から専門的な援助を必要とする子どもを迎え入れる「専門里親」、実親が養育できない場合に祖父母らが養育する「親族里親」の4種類がある。
 県内の里親登録255世帯中、養育里親の登録数は221世帯で、86%を占めている。里親と聞くと「養子縁組を希望している人が登録するもの」という印象を持っている人は少なくないと思われるが、養子縁組里親の登録は118世帯で、半分に満たない(いずれも重複登録を含む)。
 養育里親は、実親の戸籍に入ったまま預けられ、子どもの生活費は公費でまかなわれるため金銭面での負担は基本的にはない。期間は数週間から年単位までとさまざまで、子どもと実親、里親の状況などを照らし合わせながら決めていく。兄弟や姉妹をまとめて預かったり、同時に複数の子どもを受け入れることもできる。
 里親になるには居住地域の子ども相談センター(児童相談所)に連絡し、研修を受け、登録することが必要だが、登録後すぐに子どもとの生活が始まるとは限らない。特別な資格や子育て経験の有無は問わない。18歳未満の実子がいる方や高齢の方、共働き家庭(養育に支障のない範囲)でも登録できる。

 

【養育里親】
家族と暮らせない子どもを一定期間、自分の家庭に迎え入れて養育する里親
【養子縁組里親】
養子縁組によって、子どもの養親になることを希望する里親
【専門里親】
虐待や非行、障がいなど専門的な援助を必要とする子どもを養育する里親
【親族里親】
実親が死亡などによって養育できない場合に親族が子どもを養育する里親

 

◆里親になりませんか 
県内で養育里親として子どもを受け入れている2世帯に、里親になろうと思ったきっかけややりがい、里子への思いなどをうかがった。

 

◇里子のおかげで笑顔あふれる毎日 匿名・50代女性
家族構成…夫と成人した3人の息子(同居)、特別養子縁組した小学生1人、養育里親として0歳児1人を受け入れ中。

 

 -里親になったきっかけは。
 児童虐待のニュースを通して里親制度に興味を持ち、夫が講習会に応募したのがきっかけです。研修の一環で、夫婦で児童養護施設に行き、元気いっぱいだけれども、ふと寂しそうな表情を見せる子どもたちに大きな衝撃を受けました。当時、三男はまだ小学生でしたし「里親になりたい」という思いを強く持っていたわけではありませんでしたが「寂しい思いをする子を減らすお手伝いができるのなら」と、登録を決めました。
 -実子を育てながら里子を受け入れることの苦労は。
 初めて受け入れたのは施設で暮らす小学生の男の子で、週末や長期休みに預かりました。何度も来てくれたので、息子たちにとっては「いとこが泊まりに来た」といった感じで、特に三男は年齢が近かったので友達も交えて遊んでいましたよ。上の二人は年齢が離れていましたので、関わる余裕がないときなどは自室にこもっていましたね。自営業をしている知り合いの子どもを繁忙期などに預かることがあったので、同じことという気持ちでした。
 -特別養子縁組した子について。
 ある日突然、子ども相談センターから「生後2カ月未満の子を明日からお願いできませんか」と電話がかかってきて、急いで家族会議をして受け入れを決めました。赤ちゃんの受け入れはこの子が初めてでした。
 当初は実親の元へ帰る前提で何度も面会しましたが難しいとなり「この子はどうなっちゃうの」と。私たちも息子たちも近くに住む私の両親も皆、「うち以外ありえない」という気持ちでしたし、本人も望んでくれていたので、小学校に上がるタイミングで特別養子縁組をしました。
 この子以外にも、これまでに何人もの子を預かっています。たまたまかわかりませんが、多くが赤ちゃんで今も一人います。息子たちは、赤ちゃんが大好きで、家に帰ってくるなり、手を洗ってまずは赤ちゃんの元へ駆け付けます。みんな、おむつ替えも寝かしつけも手伝ってくれます。
 小学生の子も、2歳ぐらいの子だと私たちを独占しようとして攻撃される場合があるので「かむ子だけは嫌かな」と笑って言いますが、誰かが来るのを楽しみにしています。
 -里親をしてよかったことは。
 大人だけの生活ではありえないほど毎日笑っています。小学生の子とは「生まれてくるおなかを間違えちゃっただけで最初からうちの子なんだよ」と話しています。かけがえのない存在であることは言うまでもありません。今お預かりしている赤ちゃんはもうすぐ実親の元へ帰る見込みですので寂しくなります。夫は退職して家にいますし、赤ちゃんなら3人ぐらいいても大丈夫かもと思えるぐらい、楽しい毎日が過ごせていて感謝しています。 

 

◇子どもの成長が一番のやりがい 西垣真之さん・智美さん
家族構成…夫妻と成人した長女と、中学生の次女、次男、養育里親として小学3年生、1年生を受け入れ中。

 

 -里親になったきっかけは。
 智美さん 高校の同級生に児童養護施設から通っている方がいました。施設での暮らしについて聞く中で「力になりたい」という思いが芽生え、里親制度に興味を持つようになりました。
 真之さん 妻の思いは以前から知っていましたし、里親をしている知人が身近にいましたので、私としても「いつかは」という気持ちでした。
 智美さん 初めて受け入れたのは20年ほど前で、結婚で家を離れた長男が小学1年のときでした。年1回、施設の子を預かる「3日里親」の募集記事が広報誌に出ていて「数日なら」と応募し、小学生の男の子が来るようになりました。中学卒業まで毎年顔を出してくれましたよ。
 真之さん 7年間で3人が来てくれました。その後、親の介護で忙しくなったので7年ほどは受け入れをやめていました。そんなある日、3日里親として預かったことのある男の子を家の前で見かけ、思わず声を掛けました。すると「近くの高校に進学したので、ふと家を探したくなったんだ」と言われびっくりしました。同時にすごくうれしかったです。そこで連絡先を交換し、彼が20代になった今でも連絡を取っています。仕事の愚痴なんかも聞いてますよ。その再会が里親のすばらしさを再確認する機会になり、6年ほど前からは養育里親をしています。
 -養育里親として心掛けていることは。
 真之さん 未就学児であっても、自分のことは自分でするように促しています。実親の元に帰っても困らないようにとの思いから、しつけは厳しめにしています。
 智美さん これまで預かった子の実母は皆さん、子どもと一緒に暮らせる日に向けて努力していました。そのため、「私たちに懐きすぎて面会に来たママの元へ行かない」とならないよう、普段から気を使っています。
 -やりがいは。
 真之さん やっぱり、子どもの成長していく姿が見られることが一番のやりがいです。先方の状況が許すならずっとつながっていきたいですね。つながりさえしていれば、子どもやその親が困ったときに力になれるかもしれませんしね。
 うちを卒業して実親の元に戻った子が7人いるのですが、全ての親と連絡が取れます。今年の夏休み、「みんなで集まろう」と声掛けしたところ、なんと全員が参加してくれました。久しぶりの子もみんなが「西垣のおとうさん」と呼んでくれ、改めて「里親をして良かった」と思いましたね。
 智美さん 子どもたちから教えてもらえることはとても多いです。大きな学びの機会にもなりますので、もし里親になりたいという方がいたら、楽しんでやってもらえば良いのではと思います。

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