岐阜県 子育て情報発信サイト はぐくみのわPROJECT
  >  はぐくみのわニュース  >  はぐくみのわPROJECT 性別にとらわれず輝ける社会に 11月は県の「男女共同参画推進強調月間」
2024/08/28  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 性別にとらわれず輝ける社会に 11月は県の「男女共同参画推進強調月間」

 

 男女共同参画社会基本法が制定された1999年以降、働く女性に対する理解等は進んでいるように感じるが、スイスのシンクタンクである世界経済フォーラムが男女格差を数値化した「ジェンダー・ギャップ指数」の2023年度版の結果によると、日本は調査対象の146カ国中125位で、116位だった昨年よりもさらに順位を落としているのが現状だ。日本は特に、「経済」と「政治」の順位が低く、「経済」は123位、「政治」は138位という結果になっている。他にも昨年の総務省統計局の社会生活基本調査によると、県内の6歳未満の子どもがいる世帯の家事関連時間(週全体平均)は、夫が1時間46分、妻が7時間10分と、妻は夫の約4倍もの時間、家事などを行っていることが明らかになっている。
 毎年11月は岐阜県が定める「男女共同参画推進強調月間」。強調月間を前に男女共同参画社会の実現に向けて必要なことについて考えていく。

 

 男女共同参画とは…男女が平等に個人として尊重され、社会の対等な一員として、自分の意思ですべての分野の活動に参画することができることにより、男女が政治的、経済的、社会的、文化的などの面で等しく利益を受けることができ、ともに責任を負うことを意味している。

 

◆アンコンシャス・バイアス 解消に向けて 岐阜大名誉教授 近藤真庸氏
◇男性は仕事をして家計を支えるべき?/女性には女性らしい感性がある?
 男女共同参画社会について、県男女共同参画二十一世紀審議会の会長などを歴任し、22年度には「県男女がともにいきいきと暮らせる社会づくり表彰」に選ばれた岐阜大名誉教授の近藤真庸氏に男女共同参画の実現に向けて必要なことを伺った。

 

 -男女共同参画との関わりは。
 これまで、岐阜大学地域科学部で健康教育論について指導したり、「小学校保健指導の手引き」の作成や小中高校生向けの保健体育の教科書の執筆・編集、エイズ、健康教育に関する講演などを行ったりしてきた。
 県の「男女共同参画計画(第4次)」(計画期間・2019-23年度)には審議会会長として策定に関わった。その中で、男女共同参画社会を実現させるには、アンコンシャス・バイアスの解消が不可欠だと考えている。
 -アンコンシャス・バイアスとは。
 無意識の思い込みを指す言葉として使われているが、昨年度に県が実施した県民意識調査によると、「『男は仕事、女は家庭』がよい」と答える人の割合は、この30年間で減っているし(男性は27・4%から3・3%、女性は16・5%から1・6%)、「男女とも仕事をし、家事・育児・介護も分かち合う」の割合は増えている(男性は42・7%から84・0%、女性は62・9%から89・1%)。
 しかし一方で共働き世帯における家事・育児・介護に携わる時間は、どの調査結果を見ても女性の方が明らかに多い。これは「性別による固定的な役割分担意識」についてのアンコンシャス・バイアスが反映していると推測される。
 -アンコンシャス・バイアスの現状は。
 内閣府男女共同参画局の昨年度の「性別による無意識の思い込み」について調べた調査結果によると、男女ともに40%以上が「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」「女性には女性らしい感性があるものだ」と答えている。
 先般の内閣改造では、女性閣僚が過去最多に並ぶ5人起用された。この際の「ぜひ女性ならではの…」との発言について、世論ではさまざまな議論や意見が交わされた。
 改めて説明するまでもなく、性別による特性の言説は、性差よりも個人差の大きいことである。
 さらに私ががっかりしたのは、批判に対して「批判する意味がわからない」という声が多くあったことだ。「批判の意味がわからない」と言って思考停止してしまうのではなく、批判された理由を知ろうとすることが必要。逆もまた然り。批判する側も、肯定側の意見を無視するのではなく耳を傾けて「対話」することが大切。双方に求められているのは対話のための想像力とエンパシー(共感)である。
 すなわち、相手の意見をしっかりと聴き、理解した上で粘り強く「対話」すること。「同意」できなくても理解することが大切なのだ。それなしには、どれだけ「男女共同参画社会を実現させましょう」と啓発したところで広がりが生まれないだろう。
 -アンコンシャス・バイアス解消に向けてできることは。
 「男女共同参画計画(第4次)」において、人権尊重の観点からの配慮は「正しい知識の普及」「啓発」「相談体制の充実」を明記しているが、当事者の声に耳を傾ける必要性を強調しておきたい。
 アンコンシャス・バイアスがなくならないことにより、障がいのある方やLGBTQなどの方はさらに複合的に困難な状況に置かれてしまっているのが現状。例えば、ADHDの方の中には「順序立てて物事を考えることや、整理整頓ができない」という方がいるが、そういった方にとって、待ったなしの状態が続く育児や家事をすることはとても大変なこと。うまくできなくて気にしている中、パートナーから「一日中家にいたのに何をしてたんだ」と言われると落ち込みが増してしまうだろう。家事や育児は家族で支え合いながら、共に担っていくことが理想的ではないだろうか。
 LGBTQの方に関しては、生きづらさ解消につながることの一つとして、パートナーシップ制度がある。受領証を見せることで、公営住宅に同居家族として入居の申し込みができたり、医療機関での面会や緊急連絡先の指定ができたりなど結婚に準ずる関係として認められるもので、同性婚とは別。県内では昨年4月の関市を皮切りに、県においても9月から運用を開始したところであり、さらなる制度の普及に期待したい。
 近年、若者の県外流出が課題になっているが、学生の話を聞くとその要因は利便性や働く場の問題だけではないように感じる。人手不足の昨今、県内の多くの企業では魅力的な職場づくりに力を入れているが、アンコンシャス・バイアスの解消についても、今一度考えていただければと思っている。

 

◆県男女共同参画・女性の活躍支援センター
住所 岐阜市薮田南5-14-53
   OKBふれあい会館第2棟9階
電話 058-214-6431
HP http://gifujo.pref.gifu.lg.jp/
開所 月曜~土曜 午前9時~午後5時
   ※日曜祝日、年末年始、OKBふれあい会館休館日は休み


全ての子どもが子どもらしく

◆昨年度の県内子ども相談センター 児童虐待相談対応件数2684件 過去最多 虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」の認知進む

 11月はこども家庭庁の「オレンジリボン児童虐待防止推進キャンペーン」の実施月。県内の子ども相談センター(児童相談所)における児童虐待相談対応件数は昨年度、過去最多となった。また、児童虐待とは分けて考える必要があるが、家族の世話や家事等に追われる「ヤングケアラー」の問題もフォーカスされるようになり、全ての子どもが子どもらしく、元気にすくすく育てるように社会全体でこれらの問題を考えていく必要がある。

 

 県内5カ所にある県子ども相談センター(児童相談所)が対応した「児童虐待相談対応件数」は、2684件(対前年比12・3%増)と過去最多となった。
 相談内容を見ると、言葉による脅しや無視、目の前で家族に暴力をふるうなどによる「心理的虐待」が、最も多い1384件と全体の51・6%を占め、「身体的虐待」が885件(33・0%)、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が368件(13・7%)となっている。
 年齢別では「6~9歳未満」が523件、「9~12歳未満」が518件、「3~6歳未満」が495件と、被害を受ける年齢による大きな差はなかった。主な虐待者は「実母」が44・5%、「実父」が41・8%とほとんどを占めた。相談に至った経路としては「警察等」が最も多く、次いで「学校」や「市町村」など身近な相談窓口が並ぶ。
 虐待相談への対応として、施設入所は45件、里親委託は6件で、保護者等への面接指導が2522件と94・0%を占めている。
 県は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」の認知や県民の児童虐待に対する意識の高まりにより、虐待が重篤化する前の軽微な段階で早めに通報されることが増えていると分析。こうした状況から県では、子ども相談センターを中心に、福祉・教育・司法・医療など各機関とのネットワークも活用し、虐待の発生予防から早期発見・対応、再発防止、子どもの自立まで、切れ目ない支援を行っている。
 具体的な対策としては県では、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」について書かれたカードを県内全ての小中高校で配布し、子どもから直接SOSを出せることを伝えている。また、今年2月に開設された、子どもや子育て中の保護者が気軽に相談できるこども家庭庁のSNS相談事業「親子のための相談LINE」の周知などに努めている。
 病気の親や幼いきょうだいを世話する子ども等を指す「ヤングケアラー」や施設退所者等への支援、妊娠や出産について悩む人に対して相談を行う「産前産後母子支援事業」なども体制の充実化を図り、児童虐待の発生予防にも注力していく考えだ。

 

◆社団法人化した「オレンジリボン岐阜ネット」 ひとり親支援を強化 親子で楽しめるイベント開催
 児童養護施設や子育て支援団体の関係者らでつくる「オレンジリボン岐阜ネット」。今年2月に一般社団法人化し、初めて迎える児童虐待防止月間を前に、会長の日本児童育成園の長縄良樹統括施設長は、「児童虐待防止は、防止月間だけでなく年間を通して活動していく必要がある。一般社団法人化し、『お母さんの応援団』という気持ちで、子どもはもちろん、お母さんの笑顔を増やす活動をしていきたい」と意気込んでいる。

 

 県内では例年、オレンジリボン岐阜ネットが中心となって、児童虐待防止推進月間に合わせて「岐阜オレンジリボンたすきリレー」を行っている。今年も実施し、県内の5コースに分かれてリレーやごみ拾い、メッセージボードの展示などをし、11月12日に岐阜市長良福光の岐阜メモリアルセンターでゴールセレモニーを行う。また同日に長良川競技場で行われるサッカーJ3のFC岐阜ホームゲームのハーフタイムでは、関係者らが児童虐待防止を訴える横断幕を持ってパレードを行う予定だ。
 本年度からはこれらに加え、年間を通してオレンジリボンと冠したイベントを展開。7月には海津市の木曽三川公園センターでオレンジリボンピクニックを行った。県内のひとり親家庭の9世帯20人が岐阜市内をマイクロバスで出発し、親子で触れ合う時間だけでなく、学生ボランティアが子どもと遊んでいる間は大人同士でゆっくり話す時間を設けて交流を深めた。オレンジリボンキャンプは今月8、9日に山県市のグリーンプラザみやまであり、申し込み開始直後に枠が埋まる盛況ぶり。キャンプファイヤーやカレーづくりなどを楽しんだ。
 長縄会長は「これまでは児童相談所虐待対応ダイヤル189を知ってもらうことで『防止』しようという思いで活動してきた。これからは『予防』いう視点も重視。特にひとり親は仕事と生活のことで日々精一杯なので、息抜きになるようなイベントを県内全圏域で手掛けることができたら」としている。

\ この記事をシェアする! /