経済的、精神的などさまざまな困難を抱えていても、なかなか声を上げられなかったり、必要な支援にたどり着けなかったりする人もいるのが現状。特に子育て世帯は毎日が慌ただしくなりがちで、立ち止まって回りを見渡すことすら難しい場合が多い。今回のはぐくみのわでは「人と人がつながって相手を知ることで、できる支援があるのでは」という考え方から、居場所づくりや食事の提供を行う2団体の取り組みを紹介する。全てはみんなの笑顔のために―。
◆各家庭を訪ね、弁当手渡し 飛騨高山わらべうたの会 広い高山市内を駆け回る
飛騨高山わらべうたの会(岩塚久案子理事長)が2021年9月に始めた「わらぼぼ宅食」。月2回、ひとり親世帯や経済的な不安を抱える世帯、ヤングケアラーのいる世帯などに、市内の飲食店がつくった特製弁当を一食につき大人200円、子ども100円で届けている。日本一の面積を誇る高山市であっても「一軒一軒に手渡しする」ことが大きなこだわりで、一世帯のために往復1時間以上かけて届けることも珍しくない。そして届けるだけでなく近況を聞き、場合によっては公的機関に掛け合って必要な支援につなげている。
同会は、飛騨地方で独自に歌い継がれていたわらべうたを継承していこうと07年に発足。しばらくは歌に関するイベントが中心だったが、市内の女性が1歳の子どもと心中を図るという痛ましい出来事があったのを機に、各家庭としっかりとつながれる方法を模索するようになった。
そして転機になったのがコロナ禍。休校中、地元の牛乳を使って一人で過ごす子どもらにバナナココアスムージーを1杯100円で届ける事業を行ったところ、食事を十分に取れていない子どもたちの姿を目の当たりにした。また中心部を離れると、隣の家までの距離があることから緊急事態宣言の発出中は特に孤立しやすいということが浮き彫りになった。
こうした経緯から生まれたのがわらぼぼ宅食。コロナ禍で飲食店の営業に制限がかかっていた時期と重なったため、弁当を作ってくれる店はすぐに見つかった。店に支払う金額は1食550円で、差額は福祉医療機構の助成金を使っている。最初は数十食程度と思って始めたが今では100食を超える。各家庭に届けることは簡単なことではないが、取りに来られない人もいる上、訪問してわかる事も多いためこの方法を貫く。実際に初めて訪ねた家の母親から「大変なことが重なり、もう死ぬしかないと思っていた」と玄関先で泣かれたこともあったという。
今年8月からは、農家と連携して廃棄される運命にある野菜や果物をひとり親世帯等に配る取り組みも始めた。宅食と一緒に野菜を持って行ったり、野菜の一部を飲食店に渡して宅食の食材に使ってもらったりして必要としている人の元へ確実に届ける。
また月1回は、宅食の配布家庭等を対象に、活動拠点の同市西之一色町の飛騨高山・森のエコハウスで「森カフェ」を開き、子どもを自然いっぱいの中で遊ばせている間、母親はバランスボールを使って体を動かしたり、話したりしてリフレッシュしてもらう機会を設けている。ここでも食事を提供しており、県社会福祉協議会の子どもの居場所応援センターから提供を受けたものを中心に振る舞う。
岩塚理事長は「食事がふりかけご飯だけ、インスタント食品だけという家庭を見てきた。インターホンを押すとうれしそうに飛び出してくる子は多い。親と先生以外の大人が気に掛けてくれているという実感は大切。しっかりとつながっていきたい」と、活動の継続に意欲を見せる。
◆「つながること」を最重視 御嵩町のふしみこども食堂 全町民を対象に食事、居場所を提供
「まずはそれぞれとつながることが大切。つながらないことには、相手にどんな困りごとがあるかを知ることはできない」という思いから、可児郡御嵩町の「ふしみこども食堂」は、町民であれば誰でも利用することができる。子ども食堂の多くは、ひとり親家庭や子どものいる住民税非課税世帯、生活保護世帯などを対象にしているが、ここでは一切問わないのが特徴。そのため実施日の毎月第3金曜日には、仕事帰りの母親と子どもが立ち寄って、父親の分と合わせた数のテイクアウトを持ち帰る姿が多くみられる。大人一食500円で、子どもは100円、ひとり親家庭は一家族で300円。交流サイト(SNS)上で予約を募り、毎回100食ほどを提供している。その場で食べていくこともできる。
ふしみこども食堂は、伏見小学校の近くの公民館に勤務していた平井髙子さんと友人の後藤香代里さんが、地域の誰もが気軽に立ち寄れる場所をつくろうと2016年に始めた。しばらくは公民館で実施していたが、19年からは伏見小学校からすぐの場所にある町所有の空き家を借り、コミュニティスペース「ゆずりは」を設置。ゆずりはでは、食事提供日以外にも毎週金曜日は地域交流の場「ゆずりは開放日」として、ふらりと来てくれる方と交流をはかっており「カーテンが開いているときは自由に立ち寄っていい」というルールを設けている。そのため学校帰りの子どもはもちろん地域の高齢者や民生委員、さらには伏見小学校の教諭も時間を見つけては顔を出し、情報交換の場としての大きな役割を担う。
食事の提供にかかる費用は「自分たちの力でできなければ継続が難しくなる」との思いから助成金には頼らず、徴収したお金の範囲内でやりくりしている。お米や野菜などは地域住民から寄贈されることも多く、無駄にしないように主に平井さんが食事のメニューを考案し、有志が毎回10人ほど集まって調理している。また、近隣のこども食堂と連携して寄贈された食材を分け合うこともある。
小学校低学年の頃から顔を出すようになり、今では親子で手伝いもしている中学2年生の故東(ことう)来宝さんは複数回、自由研究でふしみこども食堂についてまとめたり、食品メーカーに協力を呼び掛ける手紙を送るなどして活動に携わっている。故東さんは「ここは貧困家庭だから来るところではなく、みんなが集えるから来るところ。私にとっては、ご飯を食べつつ、お手伝いしつつと自分らしくいられる第2の我が家のようなところで、大きくなっても活動に関わっていきたい」と笑顔を見せる。
平井さんは「居場所づくり活動をする中に子ども食堂があるという考え方をしていて、食事の提供は目的ではなく集まるきっかけでしかない。見る場所、見る人によって気付けることは違うのでこれからもつながりを大切にしていきたい」と話している。
◆居場所づくりの開設・運営を支援 県がアドバイザーを派遣
県では、子どもの居場所(子ども食堂、学習支援等)を新たに開設しようとする団体や、実施中の団体に対して助言を行う「子どもの居場所づくりアドバイザー」の派遣を行っている。
支援内容は、スタッフや活動拠点の確保や衛生管理、子どもとの接し方、各種補助金等の活用方法などについて、県の委嘱を受けたアドバイザーが親身になって答えるというもの。アドバイザーは、県のコーディネーターが相談内容に応じて選定して提案する。
講師料・講師の交通費は無料。問い合わせは県子ども家庭課、電話058(272)1111(内線3554)。
「ぎふ女のすぐれもの」フェア 2月17日(土)、18日(日)にイオンモール各務原インターのセンターコートにて開催
多様化する社会において、時代はジェンダーレスへと向かっている。そんな時代であっても、県内の女性が企画・開発に参画した商品・取組の中から優れた商品を県が認定する「ぎふ女のすぐれもの」の放つ輝きは変わることない。今回のはぐくみのわでは、これまでに選ばれた計30の食・モノ・サービス・取組を分野ごとに紹介する。
【食】
◆プリン・プリンセス 株式会社AQプランニング
糖質オフ&グルテンフリーと甘さを両立したプリン。(4個入/1,944円)
◆達磨正宗 アイスクリームにかけるお酒 合資会社白木恒助商店
バニラアイスとの相性が良い、日本酒を熟成させた「古酒」。(ライト/1,677円、ヘビー/7,623円各120ml)
◆鮎果鈴(あゆかりん) 長良川温泉女将会 社会福祉法人いぶき福祉会
岐阜県産小麦に砕いた話の骨、天然鮎の魚醤と飛騨山椒を使用した大人のかりんとう。
(1袋/386円)
◆飛騨高山産米粉のカップケーキ ホワイトルンゼ
アレルギーを持つお子さんにも安心。7大アレルゲンフリーのカップケーキ。(1個入/237円、2個入/518円※いずれもミニサイズ・冷凍販売)
◆ハリヨの柿酢 株式会社リバークレス
地元海津産の高糖度に育つ柿を使用し、水を一切使わず仕込む天然発酵酢。
(100ml/1,458円720ml/3,888円)
◆ふりかける醤油飛騨山椒 山川醸造株式会社
鮮烈な山椒の香りとたまり醤油の旨味が広がる岐阜ならではの焼塩。(20g/648円)
◆柿みつ 合同会社三藤
規格外の富有柿から生み出した、純度100%の柿みつ。
(100ml/1,296円180ml/2,160円)
◆トマトづくしギフト 一般社団法人ジバスクラム恵那
フードロス削減を目指し、規格外だったり市場出荷できない完熟トマトを加工したギフト。(5,000円)
◆トチ蜜 チクマ養蜂
トチの巨木に見守られた森だからこそ採れる、希少なトチの蜂蜜。(50g/530円90g/950円500g/3,320円)
【モノ】
◆スノーウィー花酵母日本酒の保湿液 アトリエキク有限責任事業組合
郡上の酒蔵で作られる花酵母で仕込む日本酒を使った保湿液。(100ml/3,520円)
◆進化系おしゃれマスク 株式会社エスト
ファッションの一部として楽しめる、デザイン性のあるマスク。(1つ594円~)
◆Math Salt 有限会社大橋量器
枡で使われるヒノキの香りを楽しめる、新しいバスアイテム。(各880円)
◆タフシロン 人工筋肉膝サポーターホールド 株式会社タナック
医療現場で使われているシリコーン(タフシロン®)素材を、膝の筋肉に沿って加工した膝サポーター。(1個/3,190円)
◆除塩素入浴料 おぷろシリーズ 株式会社水生活製作所
水道水中の残留塩素を除去して、湯ざわりをまろやかにする入浴料。
(10包セット/1,980円)
◆おろし上手食育セット ヤマ忠木股製陶合資会社
子どもに本物の美味しい離乳食を食べさせたい、陶磁器のすりおろし器と小さなうつわの入ったセット。(1セット/13,200円)
◆蛇の目傘三日月 仐日和
手漉き和紙で描かれるシャープな三日月に黒竹の持ち手を合わせた、モダンな蛇の目傘。
(61,600円~)
◆網代日傘 高橋和傘店
歴史博物館に展示されていた優美なデザインを再現し、装飾的な糸かがりなど独自の技を加えた機細な和傘。(66,000円~)
◆さらさらキャニスター 丸新製陶有限会社
女性ならではの着目点で開発された、砂糖や塩がずっと固まらない、ナチュラルデザインのキャニスター。(SALT/SUGAR各1,650円)
◆「カエールピカピカ」せっけん 養老町女性会議
植物性廃油を活用した、手作りの環境に優しい洗濯用・台所用の固形せっけん。(1個/500円)
◆キッチンブラシ 赤田刷毛工業株式会社
カネゴートというしなやかな化繊毛と硬い豚毛を配したブラシ。柄には岐阜県産東濃ひのきを使用。(1個/1,650円)
【サービス】
◆キレイをかなえる女性専用ローンBi-sket【ビスケット】 株式会社大垣共立銀行
エステや美容整形などの目的で利用できる、美しくなるための女性専用ローン。
◆介護エステケア(高齢者向けエステサービス) 特定非営利活動法人 ひだまり創
外見が変わると心も変わる!心身状況に合わせて顔や手脚のケアを行う高齢者向けエステサービス。(基本料金50分/3,850円)
◆陶育 美濃焼を正しく楽しく使うことを学ぶ 美濃焼おかみ塾
陶磁器一大産地の土岐市から発信する、子どもたちに美濃焼の魅力を伝える活動。
◆不妊治療関連ローンFutari-de【フタリ・デ】 株式会社大垣共立銀行
「子どもを授かりたい」というご夫婦の願いをサポートするために生まれたローン。
◆市民講師を招いた体験型のアフタースクール 一般社団法人ヒトノネ
魚屋さんや和菓子職人、建築家など、地元のプロを講師として払く、子どもと地域がつながる探究型学童。(長期休み1日/3,850円~、平日2時間/月額9,900円~)
◆飛騨えごまの小宿萬里 有限会社萬里
自家製のえごま料理で、飛騨の伝統食を未来へつなぐ宿。(一泊二食付き大人1名8,700円~)
【取組】
◆飛騨市薬草ビレッジ構想推進プロジェクトへの取組 地域プロジェクトマネージャー岡本文
245種類もの薬草が自生する飛騨市で、薬草の魅力を伝える活動を展開。
◆左官アートkoteto 中嶋いづみ
自分の内側に湧き出てくるものを、鏝(こて)と手に任せて、ありのままに描く。
◆職員は謙虚と感謝を忘れず、利用者様には感動と満足を提供する 株式会社 ハートコンサルタント
心と心で寄り添う介護。陽だまりのような、優しい居場所。
◆蔵のある町屋の宿「帰蝶(きちょう)」 一般社団法人 サステイナブル・サポート
心や体が整わない精神障がい・発達障がい等で、働けなくなった女性の就労継続支援をする活動を展開。