虐待、病気など、さまざまな事情で保護者と暮らせない子どもを家庭の中で実の親の代わりに育てる里親制度。子どもたちの健全な成長や、明るい未来のために重要な存在とされているものの、実際に里親に委託されている児童数は決して多くはない。厚労省が定める10月の「里親月間」を前に、今回のはぐくみのわでは里親制度について考えていく。
◆261世帯が里親登録 昨年度県内 87人が里親と生活 厚労省の福祉行政報告例によると、それぞれの事情で親と離れて暮らす代替養育の必要な児童は、2021年度末時点で全国に4万2千人ほどいるとされ、その多くが児童養護施設や乳児院等で生活している。国が家庭養育優先原則を打ち出していることから、子どもたちが里親との生活ができるよう国や自治体ではさまざまな調整を続けているものの、実際に里親に委託されている児童数は6080人にとどまっているのが現状だ。
岐阜県では昨年度末時点で261世帯が里親登録し、代替養育必要児童数は483人。うち87人が里親の元で生活している。県の担当者は「現状で18・0%の子どもを里親に委託している。この数字を5年後までに41・7%にすることが目標」としている。
里親と一言で言っても、実親と暮らせない子ども(原則18歳未満)を一定期間家庭に迎え入れて養育する「養育里親」、養子縁組を前提とする「養子縁組里親」、虐待や非行、障がいなどの理由から専門的な援助を必要とする子どもを迎え入れる「専門里親」、実親が養育できない場合に祖父母らが養育する「親族里親」の4種類がある。
県内の里親登録261世帯中、養育里親の登録数は226世帯と大半(重複登録を含む)。養育里親は、実親の戸籍に入ったまま養育し、子どもの生活費は公費でまかなわれるため金銭面での負担は基本的にはない。期間はさまざまで、子どもと実親、里親の状況などを照らし合わせながら決めていく。兄弟や姉妹をまとめて預かったり、同時に複数の子どもを受け入れることもできる。
里親になるには居住地域の子ども相談センター(児童相談所)もしくは子ども家庭支援センターに連絡し、研修を受け、登録することが必要だが、登録後すぐに子どもとの生活が始まるとは限らない。特別な資格や子育て経験の有無は問わない。18歳未満の実子がいる方や高齢の方、共働き家庭でも登録できる。
【養育里親】
家族と暮らせない子どもを一定期間、自分の家庭に迎え入れて養育する里親
【養子縁組里親】
養子縁組によって、子どもの養親になることを希望する里親
【専門里親】
虐待や非行、障がいなど専門的な援助を必要とする子どもを養育する里親
【親族里親】
実親が死亡などによって養育できない場合に親族が子どもを養育する里親
◆里親になりませんか 受け入れ家庭にインタビュー
県内で養子縁組里親として子どもを受け入れて、養育里親として登録を続ける2世帯に、里親になろうと思ったきっかけややりがい、子への思いなどをうかがった。
◇子どもは多くを教えてくれる存在 40代夫妻 家族構成…夫妻と養子縁組した1歳児の3人家族
養子縁組で迎え入れた男児と幸せな毎日を過ごす。養育里親も、縁があれば受け入れていきたい考えだ
-里親になったきっかけは。
妻 子どもを授かれず、夫から養子縁組をしてはという提案があり、研修を受けて登録しました。すると数日後、里親家庭が一時的な休息のために子どもを預けるレスパイト・ケアの話があり、赤ちゃんを数日間預かりました。
夫 もともとは特に子ども好きというわけではありませんでした。しかし研修を受け、そしてレスパイト・ケアで赤ちゃんと一緒に生活してみて「なんてかわいいんだ」と。養育里親も含め、子どものいる生活を望むようになりました。
妻 その数カ月後、「来月生まれる子どもがいる」という特別養子縁組に関する話が来ました。生まれた後は私も入院して看護師から沐浴の仕方やミルクの与え方などを学び、一緒に退院し、3人での生活が始まりました。
夫 名前も自分達で決めることができました。これは大きなことで、自分の名前から一文字取れましたし、父親になったという自覚が持てました。
-周りにはどんなタイミングで伝えましたか。
妻 パート先には里親登録をした段階で「受け入れが決まったら急に退職する可能性がある」と伝えました。皆さん理解してくださり、決まった際はお祝いもいただきました。子育て中の方が多い職場でしたので、お下がりもたくさんいただき、遊びにも来てくれます。子育てが落ち着いたらまた戻りたいですね。自分の実家にも登録の段階から話しています。
夫 私もオープンにしています。職場には特別養子縁組の話が来た際に「生まれたら、急に仕事を抜けることになるかもしれない」と伝えました。妻も私も周りの方には本当に恵まれていますね。
-新たに子どもを受け入れる予定は。
夫 養子縁組里親と養育里親の両方の登録を今もしています。実子が小さいのでしばらく来ないのではと思っていますが、縁があったら大切にしたいです。
子育てを始めたことで視点が変わりました。子どもは私たちに新たなことを教えてくれる大切な存在です。
妻 妹の子どもと遊ばせていると、やはり「兄弟っていいな」と思います。縁があると良いですね。
◇養子縁組の恩返しとして養育里親に 髙田知子さん 家族構成…夫妻と養子縁組した中学生の男の子と小学生の女の子と猫
養子縁組で迎えた娘が0歳のときに写真館で撮った家族写真。娘は小学生に、息子は中学生になった
-これまでの里親としてのあゆみは。
養子縁組里親になりたくて40代前半で登録しました。登録して数カ月後に息子の話が来て、生後4カ月で家庭に迎え、育てていく中で「妹か弟がいたらもっと良い」と思っていたのですがなかなか縁がなく、年1回、施設の子を3日間だけ預かる「3日里親」として中学生の男の子を3年間受け入れました。その後、息子と5歳差で娘が来ました。娘は誕生前に受け入れが決まったため、退院のタイミングで我が家に来て、4人での生活が始まりました。
しばらくは2人の育児で手一杯でしたが、娘が小学生になるぐらいのタイミングで養育里親の話が来て、2歳の男の子を1年半ほど受け入れました。
-養育里親もする決意をしたきっかけは。
3日里親で受け入れた男の子はトマトが苦手でした。しかし、お昼ご飯にミートスパゲティを作ってしまったところ、別のものをリクエストするわけでなく、「少しで良いよ」と言われたことにショックを受けたことがきっかけです。施設では給食のように献立が決まっているため「別のものを食べる」という選択肢が与えられていないことを痛感したのです。
それは家庭であれば容易にできること。1対1で育てることの大切さを再認識しました。それまでは、特に小学校高学年以上の大きい子を受け入れることを不安に思っていましたが、できる範囲で受けていこうという気持ちになりました。
-養育里親として受け入れた子については。
うちに2歳の時に来て3歳半のときに親元へ帰っていきました。実の親のような気持ちで接し、七五三のお祝いには袴を着せて「家族写真」も撮りました。ですから帰った後の喪失感は大きく、もう会えないと思うと今でも寂しい気持ちになりますね。幸せに暮らしていることを願います。
別れの寂しさはありますが、それでも今後もご縁があれば養育里親を引き受けたいです。養子縁組里親になった方の中には、成立後に里親登録すら辞めてしまう方もいますが、私は、2人が実子になってくれた恩返しとして、養育里親を引き受けていきたいと思っています。
子ども家庭庁の里親制度を知らせるポスター
◆「里親カフェ」で語ろう 県が各地で交流会開催
県では、里親や里親に興味のある人、施設職員、地域住民が地域の喫茶店などでお菓子や飲み物を味わいながら気軽に交流する「里親カフェ」を行っている。参加無料で誰でも参加できる。
岐阜地域では毎週第2火曜日に岐阜市内で開催予定。西濃地域は10月26日に揖斐郡池田町内、中濃地域は10月19日は関市内、同26日に美濃加茂市内で開催。東濃地域は今月16日に恵那市内で行う。時間、場所等の詳細は、各圏域の子ども家庭支援センターまで。
【問い合わせ】
【岐阜】子ども家庭支援センターぎふ「はこぶね」
電話058(233)8622
【西濃】大野子ども家庭支援センターこころ
電話0585(35)2329
【中濃】子ども家庭センターとも
電話0575(24)1061
【東濃】子ども家庭支援センター麦の穂
電話0573(68)6858
マリサポで幸せ探し 県の結婚支援の取り組み紹介
「結婚したいけれど出会いがない」「マッチングアプリでの成婚も珍しくないと聞くけれどいろんな業者があってよくわからない」-。そんな独身者の強い味方と言えばOKBふれあい会館(岐阜市薮田南)にある結婚支援に関する県の総合相談窓口「ぎふマリッジサポートセンター(通称マリサポ)」。相談料や成婚料は無料で県内の市町村の結婚相談所と連携した1対1のお見合い「おみサポ」を行うなどし、出会いから結婚に至るまでをサポートしている。
【おみサポ】
◆1対1のお見合い支援 昨年度は25組が成婚
1対1のお見合い「おみサポ」は、県内38市町村が運営する公的な結婚相談所(以下・相談所)をネットワーク化した「ぎふ広域結婚相談事業支援ネットワーク」を使っており、同じ市町村だけでなく県内の登録者と出会うチャンスがある。市町村の相談所に登録した上でおみサポにも登録することで利用することができる。オンライン上でのプロフィルの閲覧も可能で、自宅にいながらにしてお相手探しができるのも特長。マリサポスタッフと市町村の相談員のどちらにも相談は可能で、また、双方が連携してきめ細やかなサポートを提供しており、昨年度は報告が来ているだけで25組が成婚に至った。
昨年度は20代、30代同士といった若いカップルや、婚活を始めて間もない人の成婚が多かったと言い、堀充美センター長は「出会いが限られていたコロナ禍。一区切りついた年だったということで、前向きに動いた方が多かったのでは」と分析する。
ただ、市町村の相談所は毎日開いていないところが大半。そこで、都合が合わない人や県外に住んでいる人でもマリサポのサービスが利用できるよう、近年ではさまざまな会員プランを打ち出している。
「ぎふで婚活会員」は、今は岐阜県外に住んでいて、結婚が決まった場合に1年以内に岐阜県にUターン・Iターンする予定の独身者なら誰でも登録ができる。これまでに首都圏で暮らす県内出身者同士が、ビデオ会議アプリでお見合いを成立させた例もあり、堀センター長は「会員になることで、例えば首都圏で暮らす県内出身者同士がおみサポ上で出会ってデートを重ね、結婚を決めたタイミングで一緒にUターンすることも可能。マリサポへの登録が古里に帰る良いきっかけになれば」と話している。県内で結婚したい独身女性(県内・県外問わず登録可能)に向けた「女性おためし会員」もある。
堀センター長は「オンラインで完結ではなく、人が関与していることが今の時代には大きなことで私たちの強み。安心して相談していただければ」としている。
【コンサポ】
◆イベントでお相手探し 専用サイトで情報発信
結婚につながる出会いを探しているものの「いきなり1対1のお見合いは敷居が高い」という人にお勧めなのが、県が県内の企業・団体や市町村と連携してイベント等を行う「ぎふ婚活サポートプロジェクト(通称コンサポ・ぎふ)」。ウェブサイト「婚活イベント情報ウェブ」(https://konsapogifu.com/)では常時、3カ月先までのイベントを紹介している。
イベントは、それぞれの主催者が、初対面の男女でも打ち解けられるよう工夫を凝らして開催。最近では自治体が主催しているものや、コミュニケーションや身だしなみなどについて学べるセミナーと出会いのイベントがセットになったものも増えている。受付開始後すぐに満席になるほど人気のものもある。年齢や居住地などの参加条件を設けているものもあるため、申し込み段階で確認する必要がある。
◆成婚者にインタビュー 「続けることが大切」 郡上市の夫妻 相談員の励ましが力に 双方が郡上市の公的な結婚相談所「マリアージュ郡上」に登録し、昨年7月に結婚した郡上市の50代男性、40代女性の夫妻にお話をうかがった。
-お二人が出会うまでについて。
夫 かなり前に登録し、市内外問わず何度もお見合いをしましたがご縁がなく、やめようかと思ったことも多々あります。それでも相談員の方が励ましてくださり何とか続けてきました。妻に出会ったのは2022年秋です。検索をしていた際に見つけてオファーを出しました。
妻 20代の終わり頃に登録しました。何度かお見合いをしたり、県主催の婚活イベントに参加したりしたこともありましたが疲れて一度やめました。一人で生きていこうかと思っていましたが、私の兄が亡くなったのを機に家族の大切さを実感。2022年春に再びマリアージュ郡上に行って登録しました。相談に乗ってもらったり、イベントの予約をしたりしているうちに夫からのオファーが来て会うことにしました。
-出会ってからは。
夫 最初は市内の喫茶店でお会いしました。当時はお互いが実家暮らしだったのですが、車で5分ほどの距離に住んでいたり、同じ店に行っていたりということがわかり、今までお見合いした人たちと比べ、とても話しやすく感じました。
妻 話す中で、私の以前の職場で夫の弟さんが働いているということがわかり驚きました。共通の話題がどんどん出てきてとても楽しかったことを覚えています。
夫 帰宅後に交際希望を出し、月に1、2回会うようになりました。デートは最初のうちは近場でしたが、福井県敦賀市が好きでよく行っていたので、冬頃からは敦賀までドライブすることも増えましたね。そして4月22日(よい夫婦の日)に指輪を用意してプロポーズしました。
妻 プロポーズの少し前に指輪について聞かれたため、結婚を考えてくれていることは伝わってきました。しかし、もう少し先だと思っていたので驚きましたが、うれしかったので結婚することに決めました。
-結婚が決まってからは。
夫 すぐに結婚式場と一緒に住む場所を探し始めました。結婚式場は3つ見学に行き、5月末ぐらいには申し込みをしました。
妻 新居については、婚約もしくは結婚していることが条件のファミリー向けの物件に決めました。婚姻届受理証明書を出すことが手続き上、一番手間がかからなさそうでしたので、日取りが良かった7月23日に入籍しました。9月から一緒に住んでいます。
-相談所に登録しようかどうか迷っている方へのメッセージを。
夫 マリアージュ郡上の相談員の皆さまには大変お世話になりました。婚活に挫折しようになったときはその度に相談し、励ましていただき、そういった積み重ねでついに巡り合うことができました。セミナーなどにも何度か参加し、マリサポの方にもいろいろなアドバイスをいただきました。辞めずに続けていくことが大切なのではと思います。
妻 再登録して半年ほどで夫に出会えましたので、お見合いをこちらから申し込むことはなかったのですが、相談に行った際にイベントへの参加を勧めていただいたり、親身にアドバイスをくださったりしたおかげで良い人に出会えたと思っています。相談員の方の前では、必要以上に恥ずかしがったりすることなく、現状や思いを伝えてコミュニケーションを取っていくことが大切なのではと思っています。
◆婚活の準備、始めよう マリサポ・カフェ 5圏域で実施へ
ぎふマリッジサポートセンターに足を運べば、スタッフのアドバイスを受けながらお相手探しができる=岐阜市薮田南、OKBふれあい会館
結婚を考える人らにマリサポを身近に感じてもらおうと岐阜県は本年度、5圏域で「マリサポ・カフェ」を開催する。参加無料。
当日はお見合いそのものをするのではなく、婚活のための準備が狙い。開催には各圏域で結婚に関する相談対応やサポートなどに取り組んでいるボランティア「ぎふ婚活サポーター」が全面協力し、それぞれの専門を生かしてメイクや着こなし、コミュニケーションなどの講座を開いて後押しする。また、プロフィルに掲載する写真撮影や結婚支援コンシェルジュによるお悩み相談、おみサポのデモ体験などもある。
募集は各回30人程度で事前予約を優先。参加希望者はぎふマリッジサポートセンターまで申し込む。
日程は次の通り。時間はいずれも午前9時~午後5時。
▽岐阜 11月24日 各務原市役所市民交流スペース(各務原市那加桜町1―69)▽西濃 12月7日 大垣市スイトピアセンター(大垣市室本町5―51)▽中濃 11月4日 せきてらす(関市平和通4―12―1)▽東濃 11月30日 川地家(多治見市日ノ出町2―34)▽飛騨 12月14日 高山市民文化会館(高山市昭和町1―188―1)
【ぎふマリッジサポートセンター】
電話 058-201-0141
メール marisapo@ne-planning.com
HP https://konsapo.pref.gifu.lg.jp/
開所 月曜~日曜 午前9時~午後5時
※祝日、年末年始休み