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2024/05/27  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 多様性社会、働きやすさでリード 県WLB推進エクセレント企業

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 仕事と家庭の両立支援や、従業員が力を発揮しやすい職場環境づくりなどを進める企業の中で、特に優良な取り組みや他社の模範となる独自の取り組みを行う企業を県が認定する「県ワーク・ライフ・バランス(WLB)推進エクセレント企業」。2011年度に始まり、昨年度までに198社が認定を受けている。
 企業ごとに取り組み内容はさまざまで、入社年次や年齢、国籍、障がいの有無に関わらずに生き生きと活躍できる土壌を整えたり、子育て支援やメンタルケア、情報通信技術(ICT)の活用に力を入れたりと、多様性が求められる今の時代に対応していく上でヒントとなる事例も数多い。


◆昨年度は17社認定 「働き続けられる」好例続々
 昨年度は、建設業や情報通信業、製造業などから17社を新たに認定。生産性向上の取り組みとしては、速読トレーニングによって社員の読解力を向上させたり、タブレット端末を通じた作業指示で作業の標準化を図るといった好例が相次いだ。
 また、従業員の交流を促す取り組みとして、専用のICチップを2人同時にかざすとドリンクが出る自販機を導入したり、5人程度のグループが行う食事などの活動費用を支給する事例が見られた。さらに、プライベートを大切にする取り組みとして、有休を2日以上連続で取得すると、追加で1日取得できる休暇制度を設ける例もあった。
 認定式は2月に県庁のミナモホールで開かれ、大森康宏副知事が各社の代表者に認定証を手渡した。
 講評には認定審査会の渥美由喜委員長が登壇。エクセレント企業の制度については「岐阜県は全国でも珍しい育成型の表彰制度で、課題を聞き、アドバイザーが出向いてやり取りすることでどんどんレベルが上がっている」と高く評価した。それぞれの取り組みや評価ポイントについても一社ずつ説明し、「これからも人が集まる持続可能な職場、ひいては何があっても仕事を諦めずに働き続けられる企業が多い先進自治体として、さらに輝いていくことを願う」と、全体に向けてエールを送った。

 

◆2023年度の認定企業 五十音順
卸売・小売 ㈱インフォファーム(岐阜市)
建設 梅田建設㈱(山県市)
製造 ㈱恵那金属製作所(中津川市)
建設 ㈱大西組(郡上市)
製造 カイインダストリーズ㈱(関市)
製造 各務原航空機器㈱(各務原市)
金融・保険 岐阜県民共済生活協同組合(岐阜市)
医療、福祉 ㈱サーバント(可児市)
情報通信 シーシーエヌ㈱(岐阜市)
製造 ㈱デジタ(恵那市)
医療、福祉 (医)登豊会(岐阜市)
製造 ㈲早野研工(大垣市)
学術研究、専門・技術サービス(税)ぷらす(岐阜市)
製造 三菱ケミカル㈱中日本事業所(大垣市)
建設 Miyama㈱(山県市)
情報通信 ㈱ミライコミュニケーションネットワーク(大垣市)
情報通信 ㈱ライトスピードソリューションズ(大垣市)

 

◆2社の取り組み紹介&認定を受けてこんなメリットが♪
 昨年度認定を受けた17社の中から、2社の取り組みを紹介する。また申請担当者に、認定を受けたことによるメリットや社内の変化を聞いた。

 

◇インフォファーム 社員一丸で業務削減と働き方改革進める


 インフォファームは、以前は「不夜城」と言われたほど残業の多い社風だったが、コロナ禍をきっかけに見直しに着手。辻雅文社長が30回にもわたって社員とランチミーティングをして声を聞いたり、委員会を発足させたりと本腰を入れ、あらゆる改革を進めた。
 業務削減に向けては、会社支給のスマートフォンを内線電話同様に使用できるようにする「どこでも内線」を取り入れたことで、電話の取次ぎにかかる時間を大幅に減らすことができた上、内線の登録作業をなくすことができた。他にも給与明細をWEB配信に切り替えたり、社内稟議のペーパーレス化を進め、最短で当日決裁を可能にしたりと枚挙にいとまがない。
 働き方改革については社内フリーアドレスの導入、服装自由化、在宅勤務の制度化、ノー残業DAYの実施などを進めた。
 その結果、ダイバーシティの推進が加速し、2023年度には外国人学生の正社員採用が実現した。ウクライナ出身のラザレヴ・アルチョムさんは、公務員として働いた後に来日。名古屋市内の専門学校でプログラミングを学び、就職活動をして入社した。アルチョムさんは「毎日が成長できる職場。良い社会の実現の力になれたら」と目を輝かす。24年度にも外国籍社員1人を採用した。入社後に障がいを持った社員に対しても、常時在宅勤務を認めることで継続雇用につなげている。
 地域貢献にも注力しており、コロナ禍では10年以上前に開発した自社製品の抗菌・抗ウイルスコーティング剤を、希望のあった公的機関等には無償で塗布。職場体験の受け入れや高校等での出前授業にも積極的で、岐阜の未来を担うIT人材の育成に向けて大きな役割を担っている。

「認定をいただいたことで、社外へのイメージアップはもちろん、社内のさらなる職場環境改善へのきっかけとなりました。最近では、時差出勤の規則を見直したことで、子どもの送迎や通院などにも使いやすくなり、社員の柔軟な働き方の実現につながっています」
(コーポレート本部・森屋保奈美さん)

 

◇早野研工 オリジナル商品の開発通して技術習得


  早野研工のスローガンは「『待ち工場』から『価値工場』に」。自動車や建設機械関連の金属加工だけでなく、オリジナル商品の開発に積極的に取り組んでおり、毎年の新卒社員の研修カリキュラムにもなっている。
 2020年に入社した松井勇樹さんは入社1年目の時、組み立て式の焚き火台を形にしたところ、日本最大級の展示会「東京インターナショナル・ギフト・ショー春2021」においてグランプリに選ばれた。松井さんは「焚き火台を商品化したいという思いがあったから、CADや機械操作を短時間で習得でき、今につながっている。仕事に慣れるという点でも任せていただけて良かった」と振り返る。
 パートを含めた女性のみの商品開発チームもあり、「町工場で働く女性の声から生まれたアクセサリー」と名付けて真鍮のイヤリングやキーホルダーなどを手掛け、ネットショップや地元のマルシェで販売している。入社5年目の岩田葵さんは「マルシェで一般の方と接することは、モノづくりへのモチベーションアップにつながっている」と話す。
 商品開発への熱い思いは、インターンシップの高校生や大学生にも惜しみなく伝えている。3日間程度の短期インターンシップでも、キーホルダーづくりを実施。過去には半年間の長期インターンシップをした学生が、機械操作を一から覚えてカードゲームをする際に使うカウンターを製作、クラウドファンディングにまで挑戦した。カウンターは今でも販売されており、ゲームファンの間では知る人ぞ知る人気商品となっている。

「認定を受けたことは、求人募集や名刺などで早速PRしています。取引先から取り組み内容について質問を受けたり、新卒採用で強みにできたりと早くも広がりを感じています。自社の強み弱みを見つめ直すきっかけにもなり、次は何に取り組むべきかを社員と話す機会も増えました」
(総務担当・早野悦子さん)

 

【県WLB推進エクセレント企業申請等の問い合わせ、相談】
県男女共同参画・女性の活躍推進課
電話 058-272-8237
メール c11234@pref.gifu.lg.jp

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保育士に「なる」「続ける」後押し

  幼い子どもを育てながら働く保護者にとって、保育所は言うまでもなく育児と仕事の両立に欠かせない大きな味方。しかし保育士の確保は簡単な問題ではないことから県は、岐阜市薮田南のOKBふれあい会館内に県保育士・保育所支援センターを設け、保育の仕事の魅力発信や保育士資格保有者と保育所のマッチング、現役の保育士に向けたサポートなどに取り組んでいる。全てにおいて、公立だけでなく私立の保育所や認定こども園等も対象。センターの利用料や紹介料はかからない。

◆未経験からの第一歩 黒野こども園 林さん センターが就職サポート
 県保育士・保育所支援センターでは、県内各地のハローワークへ出向いて「保育のしごと出張相談会」を定期的に行っており、センターまで足を運ばなくても、サポートを受けられるようにしている。岐阜市の黒野こども園で今年4月から働く林麻理子さんもハローワークの出張相談会が縁で保育の仕事未経験ながら就職につながった。保育士になった経緯などを伺った。

 

 -保育士になった経緯は。
 40年以上前、保育の短大に通っていたのですが実習で自信を無くしてしまい、資格は取ったものの現場で働くことはなく、ずっと高齢者介護に関する仕事をしていました。定年退職後、また介護の世界で働こうかとハローワークへ行ったところ、センターの方が来ていて試しに話を聞いてみることにしました。何度か相談するうちに働いてみたいと思うようになっていきました。センターには保母資格から保育士資格への書き換えについてもていねいに教えていただきました。

 

 -黒野こども園を選んだ理由は。
 センターで「大きい園の方が他の先生からサポートしてもらいやすい」とアドバイスをいただき、岐阜市内で最大規模の黒野こども園へ見学に行くことにしました。
 行ってみたらとても雰囲気が良かったですし、3歳未満児クラスではできる限り同じ保育者が食事やおむつ交換などをする育児担当制をしていたり、子どもたちが好きな遊びをじっくりできるように配慮していたりと、保育方針にも興味が湧き、働いてみることにしました。

 

 -仕事の進め方は。
 平日の午後3時から6時まで働いています。家のことを済ませてからの時間帯でちょうど良いですね。いろいろと配慮していただき、いつも同じクラスを担当しています。少しは慣れてきたところです。

 

 -働き始めて思うことは。
 介護も保育も重なる部分は多いということを日々感じています。「一人一人に向き合う、安全安心、その人らしく」は双方に大切なことです。とは言え、動きが違いますからね。まだまだスムーズにはできません。
 長く保育士をしていた友人に相談したところ「子どもたちから笑顔をもらえ、元気になれる仕事。今からでもぜひ」と言ってもらえました。センターや友人に背中を押してもらえなかったらやっていなかったです。夫も応援してくれています。一歩踏み出して良かったと感じています。

 

    ◇  ◆

 

 未経験で保育現場でいきいきと働くには、現場のサポートも鍵となってくる。黒野こども園の主幹保育教諭の津田安紗美さんは、「未経験の方は、子どもたちとの関わりだけに専念してもらえるようにしている。また、担当者をつけて気軽に質問できるようにもしている」と話す。保護者に連絡事項がある場合は、担任が伝えるようにルール化しているため、サポートの立場の職員が、保護者対応をすることはないという。津田さんは「当園には369人の子どもが通っており、多くの職員が必要。子育て中の先生も多いので夕方に出勤できる先生は貴重。林先生には早速助けられている」と話している。

 

◇県保育士・保育所支援センターの取り組み

◆保育士の心のケア「必要」 専門家につながる体制構築へ 臨床心理士・岐阜大学准教授 松本拓真氏インタビュー
 小中高校の教員が悩みを抱えた場合、スクールカウンセラーに相談したり、県のスペシャリストサポート事業などを通して外部の専門家とつながったりすることができるが、保育の世界では外部の専門家の活用が一般的ではないのが現状だ。
 そこで県は本年度、カウンセラーの職能団体である県臨床心理士・公認心理師協会と協力し、保育士の心のケアに関する事業を始める準備を進めている。同協会の担当者で、岐阜大学准教授の松本拓真氏に話を伺った。

 

 -保育士を巡る現状は。
 保育所は小中高校の指導要領ほど教育の内容が明確ではなく、これだけやれば十分という目安がありません。だからこそ保育士は「自分以外が担任だったら良かったのでは」という不安に陥りやすいです。また現在はネット上にさまざまな子育て情報が出てきますので、保護者から「そんなことも知らないのか」と言われることが増えたという話も聞きます。
 OECDの国際幼児教育・保育従事者調査2018報告書の保育者の自己効力感の調査では、「安心感を与えている」「自信を高められるよう援助する」などの問いに対し、「非常にできている」「かなりできている」と回答した日本の保育士は、参加国平均と比較してきわめて低かったです。自信がないのか、要求が高く疲弊しがちなのか。「やらなきゃ」と思う水準が高いがゆえ、バーンアウトしやすい状況にあるのではと考えています。

 

 -保育士の心のケアについては。
 「子どもたちのために」「自分は全然できていない」との思いで働き、休む、辞めるというところで初めて医療機関を受診するケースは珍しくありません。セルフケアを棚上げして働く保育士は実際に多いです。
 現状では心理の専門的な知識を要する案件であっても、園長や主任が担うしかありません。保育士を心理の専門家に「する」のではなく、専門家と「つながっておけばいいか」と思っていただける状況にしたい、専門家によるサポートを当たり前のものにしたいという思いで、準備を進めています。
 「保育士の心のケア事業を開始」と聞くと「保育士って病んでいる人が多いんですね」と思う方もいるかもしれませんが、誤解のないように認識していただければと思います。

 

 -心のケア事業の進め方は。
 保育士が個々に相談を申し込む方式だけにすると「相談=保育所の悪口を言う」という構図になりかねません。そこで本人からはもちろん、保育所からも申し込めるようにし、園長らが保育士をどう理解しサポートすればよいかの相談にも応じられるようにする予定です。保育士と保育所の双方がいきいきとするための事業でありたいです。
 カウンセリングに対して「話すことあるかな」と最初は不安な保育士も、始まってみると仕事への思いがあふれ出たように話されます。自分の頑張りを再確認して自信を取り戻すケースも多く、プラスに気付く機会としてもカウンセリングを使っていただきたい。
 ゆくゆくは、保育士が子育てに悩む保護者に対して「私もカウンセリングを受けたら良かったですよ。よかったらぜひ」と当たり前のように話題にできる日が来ると良いですね。子育ては誰にとっても大変なことで、みんなに支えてもらいながらやるべき。心のケア事業に支えられた保育士に支えられる子どもがいて、そして保護者にも良い形で波及していくことを期待しています。

 

【県保育士・保育所支援センター】
相談やハローワークでの出張相談会の日程確認および予約、「保育のしごと」見学会などを実施
電話 058-214-8902
岐阜市薮田南5-14-53、OKBふれあい会館第2棟9階
開所日時 平日午前9時~午後5時

 

◆来月29日にJOBフェア 興味のある全ての人が対象
 保育士資格を持っていて求職中の人から資格の取得を目指している中高生まで、保育の仕事に興味がある全ての人を対象にした「保育士になるためのJOBフェア」が6月29日正午から、岐阜市橋本町のじゅうろくプラザで開かれる。入場無料。
 県保育士・保育所支援センターと県民間保育園・認定こども園連盟の共催。当日は、保育園・認定こども園などは80園以上、保育関連学科のある岐阜県内、愛知県内の大学・短大・専門学校などが出展。ハローワークや県保育士・保育所支援センターへの相談などもできる。服装自由で履歴書不要。子どもの同伴も可能。

 

◆保育の現場見てみよう 来月から見学会
 実際に保育現場を見てみたいという人に向けては毎年、「保育のしごと」見学会を開催している。中高生向け、一般向けに分けており、中高生は夏休みに実施する。
 一般を対象にした「保育のしごと」見学会は本年度、18回の開催を予定している。参加無料で定員は各回10人で先着順。いずれも午前9時45分受付開始で同11時30分に終了する。参加希望者はエイチ・アイ・エスに申し込む。問い合わせは同社、電話052(856)0294。
 一般向けの6月から8月までの日程は次の通り。

 ▽6月21日 高富保育園(山県市)▽同27日 認定こども園すみれ楽園(可児市)▽7月3日 宝林保育園(大垣市)▽同11日 下羽栗保育所(羽島郡笠松町)▽8月9日 本母保育園(高山市)▽同21日 ハートンこまづめ認定こども園(岐阜市)▽同28日 やまと・きたがた幼児園(揖斐郡揖斐川町)

 

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