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2020/04/13  ©岐阜新聞社

教えて!汐見先生

 NHK Eテレの「すくすく子育て」でもおなじみ、東京大学名誉教授で日本保育学会会長、白梅学園大学名誉学長の汐見稔幸先生に子育てについて語ってもらう新コーナー「教えて!汐見先生」がスタート!

 子育てをしていると、「どうしたらいいのだろう」「このままで良いのかな?」とふと悩んでしまう時もあるでしょう。そんなパパやママに、保育の専門家で3人の子どもを育てた父親でもある汐見先生の話は、新たな気付きがいっぱいあるはず。子育てのヒントにしてみてくださいね。

 

 汐見 稔幸 先生 東京大学名誉教授、日本保育学会会長、白梅学園大学名誉学長

 2018年3月まで白梅学園大学学長を務める。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。自身も3人の子どもの育児を経験。保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長でもある。21世紀型の身の丈に合った生き方を探るエコビレッジ「ぐうたら村」を建設中。NHK「すくすく子育て」に出演中。著書は、『さあ、子どもたちの「未来」を話しませんか』2017年(小学館)、『汐見稔幸 こども・保育・人間』2018年(学研)、『0・1・2歳児からのていねいな保育 全3巻』2018年(フレーベル館)など多数。

Play well子どもは遊びながら学ぶ

 

 子どもが全くの未知や混沌の世界を脱して、徐々に周りの世界の成り立ちやルールを知り、またその世界とさまざまに関わる方法を身につけ、人とも上手に関われるようになっていく、こうしたプロセスを「学び」といい、そのための行動を「学ぶ」といいます。

 学ぶとは要するに、何か新しい知識やスキルを身につけることなのですが、脳で言えば、新しい知識やスキルのための脳回路ができていくことを指します。脳は二重構造で働きます。一つは意欲とか意志を扱う部分で、あの木に登りたい、コマを回せるようになりたい、この虫の名前を知りたい等々の気持ちを他の部位に伝える部分です。それに対して、もう一つの部分は、その要請を受けて、実際に脳に木の登るときの筋肉の使い方、注意の仕方、コマを回すときの腕や腰の使い方、あるいは虫の名前の類推の仕方等々ができるように脳に新たな回路をつくる部分です。この回路ができていくことを「学び」というわけですが、この学びが人間が賢くなっていくために最も大事なのです。

 

こうした学びを促す子どもの行動は何でしょうか。

 私たちはしばしば、教えれば学ぶと考えがちです。ですが、今見たように、学びは子ども自身が知りたい、できるようになりたい、という意欲や感情が湧かないと生じません。いくら教えても、本人が知りたい、できるようになりたいと思っていないことは身につかないのです。

 そう考えると、子どもの遊びのもっている大事な意義が理解されるでしょう。遊びは、子ども自身がやりたいと思って生まれる自主的な行動で、技術やスキルの向上を楽しむ、あるいは身体のストレスの発散を楽しむ、文化的な行動です。

 やってもうまくいかない→じゃあ、やり方変えよう→もっとみんなでやってみよう→こんな道具を使おう等々、試行錯誤しながら、次第に脳に新たな知的スキル的な回路をつくっていく。そうです、遊びこそ学びの宝庫なのです。最近は英語でも遊び(play)こそ学び(learning )という

ことで、これをくっつけてplay &learning 略してP&Lということが多くなっているほどです。日本語では「あそ学び」でしょうか。まさに「よく遊び、よく学べ」なのです。

 「遊んでいて賢くなるんですか?」と聞かれれば「はいそうです」と確信もって言いましょう。

 

Q&A 遊び方、遊ばせ方が分からない

 遊びには、○○遊びと名のついた遊びはもちろんありますが、子どもたちの実際を見ていると、○○遊びと命名できない遊びが大部分です。道ばたに小さな穴を見つけ、何だろうとじっと見ている、これだって子どもにとっては遊びです。やがて棒きれで穴を大きくし始めたらもう立派な探索遊びです。公園でちょっとした坂道を見つけ、そこを登ったり下ったりしているのも遊び。きれいな石を見つけて、同じような石がないか探すのも遊び。丁度いい木があったとまたいでお馬ごっこし始めたらこれも遊び。すべて名のない遊びです。

 遊びはこのようにして始まるのですが、例えば石を集め始めて、家でそれをきれいに並べて置物にするともうアート的な遊びになっています。ママときれいな石を持って帰って洗い、そこに絵の具で顔を描いて飾っていくと、その子はそのうちストーンアーティストになるかもしれません。遊びはたき火のようなもので、くすぶっている段階から、バーと燃えだして炎が上がるような段階、落ちついて燃え続ける段階、やがてもう飽きたと終息していく段階と進みます。はじめはだから何でもいいのです。何かしたくなるような場所に連れて行ってあげること、そこで子どもがあれこれしだしたらそれを原則禁止したり規制したりしないこと、子どもが戸惑ったりしていたら、ちょっと手伝ってあげること。それだけで、子どもたちは遊びを始めます。何かし始めると、あ、あぶないからやめて!というまなざしを注ぐと、子どもたちはこれいけないのかと思って遊び心を引っ込めます。大事なのは、子どもの自主的な行動のほとんどが遊びで、子どもは遊びを通じてこそ育つということを保護者が確信していることだと思います。

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