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2020/09/20  ©岐阜新聞社

はぐくみのわPROJECT 里親は社会・未来を守る鍵 里親制度を紹介

◆8割が養育里親 養子縁組せずに家庭に受け入れ
 貧困や虐待、実親の病気など、さまざまな事情で自分の家族と暮らせない子どもを自分の家庭に迎え入れ、実の家庭の代わりに育てる里親制度。子どもたちの健全な成長や、明るい未来のために重要な存在である里親。厚労省が定める10月の「里親月間」を前に、今回のはぐくみのわでは里親制度について紹介する。

 厚労省のまとめによると、実家庭で生活できない要保護児童の数は全国に4万5千人ほどおり、その多くが児童養護施設や乳児院などの施設で暮らしている。施設よりも家庭の方が、子どもと特定の養育者との1対1の愛着関係が形成されやすいことから、2016年の児童福祉法の一部改正で、家庭養育優先の理念を明文化。それにより、里親の重要性が改めて認識されるようになった。
 一方で厚労省の福祉行政報告例(18年度)によると、認定および登録里親数は1万2315世帯、児童が実際に委託されている里親数は4379世帯の5556人。岐阜県では192世帯(19年度末)が登録し、87人の子どもが里親の元で生活している。県の担当者は「保護しないといけない子どもの総数に対して、現在16・4%しか里親に預けることができていない。この数字を10年後には41・7%にすることが目標」としている。
 里親と一言で言っても、家族と暮らせない子どもを一定期間家庭に迎え入れて養育する「養育里親」、養子縁組を前提とする「養子縁組里親」、虐待や非行、障害などの理由により専門的な援助を必要とする子どもを迎え入れる「専門里親」、実親が養育できない場合に祖父母らが養育する「親族里親」の4種類がある。
 福祉行政報告例(18年度)によると、「養育里親」が3441世帯と8割近くを占めている。養育里親は、原則18歳未満の子どもを、生まれ育った家庭に戻ったり、子どもが自立したりするまで、自分の家庭で受け入れて育てる里親を指し、養子縁組を希望する里親とは別。実親の戸籍に入ったまま預けられ、子どもの養育費は公費で賄われる。期間は数週間から年単位までとさまざまで、子どもと里親の状況を照らし合わせながら決めていく。
 里親になるには子ども相談センター(児童相談所)に問い合わせ、研修を受け、登録することが必要。登録後すぐに子どもとの生活が始まるとは限らない。
 特別な資格や子育ての経験は必要なく、養育に支障のない範囲であれば共働きや、18歳以下の実子がいる場合でも養育里親になることができる。

【親族里親】実親が死亡などによって養育できない場合に親族が子どもを養育する里親
【専門里親】虐待や非行、障がいなど専門的な援助を必要とする子どもを養育する里親
【養子縁組里親】養子縁組によって、子どもの養親になることを希望する里親
【養育里親】家族と暮らせない子どもを一定期間、自分の家庭に迎え入れて養育する里親

◇里親にやりがい聞いてみました
 県内で養育里親として、子どもを受け入れている、または受け入れた経験がある2世帯に、養育里親になろうと思ったきっかけや、やりがい、実親や里子への思いなどをうかがった。

◆里子とともに実子も成長 吉福成人さん とよのさん
家族構成:夫妻と中1、小5、年長の実子。両親とも同居。
 -里親になったきっかけは。
 成人さん 私が社会人になってから両親が里親を始めました。母が「今なら理想の子育てができそう」だと言いだしたのがきっかけです。私が海外や関西にいたときで、帰省すると里子がいるという感じでした。
 とよのさん 私たちの結婚式にも両親と一緒に里子が来てくれました。結婚後しばらくは両親と別々に暮らしていましたが、両親が家を空けるときに私が里子と過ごしたこともありました。接する中で、子どもにご飯を食べさせて清潔に保ち、一緒に生活するという里親の役割の大切さを実感しました。子ども自身は素直で良い子ばかりでした。
 その後、米国で暮らし、帰国後に両親の勧めで登録しました。まだ三男が生まれて間もない頃でした。17年に3姉妹を38日間迎え入れ、その後、1歳の男の子が来て今年6月末までの2年間預かっていました。18歳になる直前で家に来た子とその息子がいた時期もありました。
 -実子が幼いと里親をしにくいのでは。
 とよのさん 高齢で里親になると、生活リズムが変化するでしょうが、同年代の子どもが増える分には大きくは変わらないので預かりやすいですよ。先日までいた男の子に関しては息子3人とも「弟ができた」と大喜びでした。私たち夫婦も「四男」という気持ちで接していました。
 受け入れ当時、三男は3歳で、末っ子でわがまま放題なところがありましたが、「弟ができた」ということで随分しっかりしました。「四男」は幼いながらに賢くて強かったので、最後の方は一番上の子でもたじたじでした。「四男」は、実子3人ともを成長させてくれる大切な存在でした。
 -やりがいは。
 成人さん 実親と関わる中で、相談を受けることもあります。ボランティアで悩みを聞く活動等をしていますし、「イライラしない子育て講座」のインストラクター資格を取るなどもしていますので、力になれることがうれしいです。
 -「四男」との別れは。
 とよのさん 実母とは頻繁に連絡を取っていましたので、再び一緒に暮らせる日に向けて努力していることを知っていました。「四男」にも伝わっていて、最後の方は、外泊(実親と過ごす)から我が家に戻ってくると悲しむようになっていきました。実の家に慣れていく様子を見ていたので、寂しいというよりは無事に帰ることができて良かったね、という気持ちでいます。
 -実親に対しての気持ちは。
 成人さん 実親による虐待が理由で、里親と暮らすことになった子どももいます。虐待をする親の多くは、虐待を受けて育ってきているそうです。殴る、怒鳴るしか育児の方法を知らないからそうなってしまっているのでしょう。虐待をしない子育ての方法を知ってもらうための働きかけをし、子育ての仕方を一緒に考えていきましょうという気持ちでいます。
 とよのさん 生んでくれてありがとう、児童相談所にSOSを出してくれてありがとうという気持ちしかありません。今は里子はいませんが、また出会える日を楽しみにしています。

◆人の役に立てる喜び実感 匿名・55歳女性
家族構成:夫と2人の里子(小学2年生と1歳)。犬2匹。二世帯住宅内に息子夫婦と2人の未就学児も生活。
 -里親になったきっかけは。
 振り返ってみて、私は親に虐待されながら育ってきたように感じます。結婚、出産後に精神的に不安定になり、「頑張って生きていこう」と思えるまで7年ほど要しました。
 自分の子どもにすら向き合えない時もありましたが、回復するにつれて「自分と同じようにつらい思いをしている子たちの力になりたい」と考えるようになり、まずは施設入所の子と週末だけ一緒に過ごす事業に携わるようになりました。最初は3歳の男の子が来ました。
 -里親になりたいと言った時の家族の反応は。
 夫は私の意思を尊重してくれました。息子の彼女(のちに結婚)には「私も里親をしたいと思っていた。子どもが来るときは知らせてほしい」と言われ驚いたことを覚えています。その後、息子たちが結婚することになり「里子が来たときに備えて一緒に住みたい」と言われ、二世帯住宅を建てました。
 最初に来た3歳の子は、中学生になりました。今でもその子の母親と連絡を取っていて、子どもに会うこともあります。成長を感じることができてうれしいですね。
 養育里親は5年前に始めました。これまでに2歳、中学2年、5カ月の子と暮らし、昨年1月に今も一緒に暮らしている小学生の子が、現在1歳の子は昨年4月に生後4日で来ました。小学生の子と1歳の子に血のつながりはありませんが仲が良く、学校でも友達に「弟」と紹介しているようです。
 -やりがいは。
 私は子どもの頃、笑うと叱られる環境にいました。だから、家で子どもが心から笑っている姿を見られるととてもうれしいです。
 小学生の子は、実親のネグレクトが原因で、来た当時はあらゆることができていませんでした。しかしどんどん吸収していき、今では学校の勉強にも付いていけています。1歳の子は、生後4日からみていますので、我が子のような気持ちです。すくすく育っていく子どもたちと一緒にいられて幸せです。
 以前預かった5カ月の子は、母親の長期入院が理由で家に来ました。無事にまた一緒に暮らせるようになり迎えに来た父親に「里親制度を知らなかったので不安だったが、しっかりとみてもらえてありがたかった」と言われ、実親の力にもなれていると実感できてうれしかったです。
 -実親との連絡は。
 養育里親は、基本的には実親の生活が整うまで預かるという立場ですので、連絡が取れる方とはこまめに取ります。1歳の子の実親は、生活が落ち着いてきたようです。子どもが帰れる日に向けて、面会の回数を増やすなどしています。
 -子どもに対しての気持ちは。
 やんちゃな子でも誰でも一緒に暮らした子はみんなかわいく、子どもが巣立った後は寂しいです。タイミング良く、次の子どもの話が来るので、寝込んでいる暇はありませんが。
 自分のためではなく、誰かの力になりたいと思って里親を始めましたので、充実感でいっぱいです。体力が続く限り続けたいです。

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